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法人成りの資産引継ぎを徹底解説!譲渡・賃貸の比較と税金・仕訳・注意点
更新日:2026.09.23
個人事業主が法人成りする際に、忘れてはいけないのが個人事業で使用していた資産の引継ぎです。商品や在庫、パソコン、車、機械、不動産などを所有している場合、「法人成りすればそのまま法人の資産になる」と考えてしまうかもしれません。
しかし、個人事業主と法人成り後に設立する法人は別の事業主体です。そのため、個人で所有していた資産が自動的に法人へ移るわけではありません。法人で引き続き使用する資産については、譲渡・賃貸・現物出資などから適切な方法を選択し、必要な契約や仕訳を行う必要があります。
また、法人成りの資産引継ぎでは、単純に帳簿価額で法人へ売却すればよいとは限りません。引継ぎ価格によっては所得税や消費税などが発生し、不動産であれば登記や不動産取得税なども関係します。借入金・売掛金・リース契約・許認可などについても、資産とは異なる対応が必要です。
本記事では、法人成りの資産引継ぎについて、譲渡・賃貸・現物出資・贈与の違いから、資産ごとの引継ぎ方法、仕訳、税金、借入金、契約、注意点まで詳しく解説します。
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法人成りの資産引継ぎとは?個人から法人へ自動では移らない

法人成りの資産引継ぎを考えるうえで、最初に理解しておきたいのが「個人事業主と法人は別の事業主体」という点です。
同じ人が個人事業主から会社の代表取締役になり、同じ場所で同じ事業を続ける場合であっても、個人名義の資産が法人名義へ自動的に変更されるわけではありません。
そのため、法人成りする際には「何を法人へ引き継ぎ、何を個人で保有したままにするのか」を整理する必要があります。
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法人成りすると個人事業主と法人は別の事業主体になる
個人事業では、事業主本人が事業主体となり、事業で利用する車やパソコン、不動産なども基本的には個人が所有します。
一方、法人成りすると会社という新しい事業主体ができます。会社の株主や代表者が元の個人事業主本人であっても、法人と個人を同一として扱うことはできません。
例えば、個人事業主が300万円の車を所有していても、会社を設立しただけでは、その車が法人所有になることはありません。
法人所有にしたいのであれば、個人から法人へ売却するなどの資産引継ぎが必要です。個人所有のまま法人で利用したい場合には、個人と法人の間で賃貸借などの関係を整理します。
ここがポイント!
法人成りの資産引継ぎでは、「会社を設立した日を境に全部の資産を移せばよい」と考えるのではなく、個々の資産について所有者と利用者を明確にすることが重要です。
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まず資産・負債・契約・許認可を一覧化する
法人成りを決めたら、最初に個人事業で利用しているものを一覧化しましょう。特に確認しておきたいのは、棚卸資産、固定資産、債権、負債、契約、許認可です。
例えば、次のようなものがあります。
- 商品・製品・原材料などの棚卸資産
- 車・パソコン・機械・工具・什器などの減価償却資産
- 土地・建物などの不動産
- 売掛金・未収入金・敷金・保証金
- 借入金・買掛金・未払金
- 事務所の賃貸借契約・リース契約・保険契約
- 事業に必要な許可・認可・届出
法人成りの資産引継ぎでは、会計ソフトの固定資産台帳だけを確認すれば十分とは限りません。
IDEMAE編集部
法人成りしたときの資産の引継ぎについて、さらに詳しく知りたい方はこちらの記事もご参照ください。
例えば、すでに経費処理して帳簿上の資産に残っていない備品でも法人で引き続き使用する場合があります。一方、帳簿には資産として残っていても、法人成りを機に売却・廃棄するものもあるでしょう。
そのため、「帳簿に載っているもの」ではなく「個人事業で保有しているもの」を一度整理することがポイントです。
すべての資産を法人へ引き継ぐ必要はない
法人成りするからといって、個人事業の資産をすべて法人へ引継ぎしなければならないわけではありません。
例えば、自宅兼事務所として使用している不動産を法人へ売却すると、登記費用や税金が発生する可能性があります。このようなケースでは、不動産そのものは個人所有のままとし、法人に事務所部分を貸す方法も考えられます。
IDEMAE編集部
高額な車や設備についても、法人へ譲渡する方法だけでなく、個人所有のまま貸し付ける選択肢があります。
重要なのは、法人成りしたという理由だけで資産を機械的に移すのではなく、「誰が所有したほうがよいか」「法人が取得する必要があるか」「税金や資金繰りはどうなるか」を比較して決めることです。
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法人成りで資産を引継ぐ4つの方法を比較

法人成りの資産引継ぎには、主に「譲渡」「賃貸」「現物出資」「贈与」という方法があります。どの方法を選ぶかによって、資産の所有者、法人の資金負担、個人側の税金、法人側の経理処理が変わります。
IDEMAE編集部
法人成りしたときの資産の引継ぎについて、さらに詳しく知りたい方はこちらの記事もご参照ください。
法人成りで資産を引継ぎするときは、それぞれの特徴を理解したうえで資産ごとに判断しましょう。
| 引継ぎ方法 | 法人成り後の所有者 | 特徴 |
|---|---|---|
| 譲渡 | 法人 | 個人が法人へ資産を売却する |
| 賃貸 | 個人 | 個人所有のまま法人へ貸す |
| 現物出資 | 法人 | 資産を金銭の代わりに出資する |
| 贈与 | 法人 | 対価を受け取らず法人へ移転する |
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譲渡|個人から法人へ資産を売却する
法人成りの資産引継ぎで一般的に検討しやすいのが譲渡です。
例えば、個人事業で使用していた車やパソコン、機械などを個人から法人へ売却します。法人は購入した資産を法人の固定資産として計上し、その後、必要に応じて減価償却を行います。
譲渡のメリットは、資産の所有関係を明確にできることです。
法人の事業で継続的に使用する設備を法人名義にしておけば、将来その設備を売却した場合なども法人の取引として処理しやすくなります。
ただし、問題になるのが引継ぎ価格です。
気をつけておきたい注意点
法人成りだからといって、個人事業時代の帳簿価額で自由に法人へ売却できるとは限りません。中古市場で価値が残っている車や不動産などについては、時価を確認し、合理的な価格で取引することが重要です。
例えば、個人が法人に土地や建物など譲渡所得の対象となる資産を時価の2分の1未満で譲渡した場合、所得税上、時価で譲渡したものとして扱われる場合があります。
「帳簿価額が100万円だから100万円で売る」という判断ではなく、「現在の時価はいくらなのか」まで確認する必要があります。
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賃貸|個人所有の資産を法人へ貸す
個人で所有している資産を法人へ移さず、そのまま法人へ貸す方法もあります。特に土地や建物などの不動産では、法人成り後も個人名義を維持し、法人から個人へ賃料を支払う方法がよく検討されます。賃貸を選べば、資産の所有権を法人へ移す必要がありません。
IDEMAE編集部
不動産を法人へ売却する場合に比べて、所有権移転登記などを避けられる点もメリットです。また、法人が不動産を買い取るためのまとまった資金を用意する必要もありません。
一方で、法人成り後は個人と法人の間に継続的な取引が生じます。
法人側では事業上必要な賃料を地代家賃などとして処理し、個人側では受け取った賃料について所得を計算します。
自分の会社だからといって極端に高い賃料を設定するのではなく、周辺相場や資産価値などから合理的な金額を設定することが重要です。
「法人へ売却したほうがよいのか、個人所有のまま貸したほうがよいのか」は、不動産の法人成りでは特に重要な比較ポイントになります。
現物出資|資産を会社設立時の出資財産にする
現物出資とは、現金ではなく車・不動産などの財産を出資し、その財産を会社の資本金などに充てる方法です。
例えば、個人事業で利用している設備を現物出資すれば、法人側が設備購入代金を支払わなくても法人へ所有権を移すことができます。
ただし、現物出資では財産の評価や会社法上の手続きが必要です。
株式会社の設立では、現物出資財産について原則として検査役による調査の仕組みがありますが、現物出資財産等の価額の総額が500万円以下である場合など、一定のケースでは検査役の調査が不要となります。
法人成りしたときの資産の引継ぎに関するおすすめ記事
また、「現物出資なら売却ではないため税金が発生しない」と考えるのも注意が必要です。
例えば、不動産を法人へ現物出資した場合も所得税上は資産の譲渡となり、現物出資によって取得した株式・出資持分の時価などを基に譲渡所得を計算します。一定の低額な現物出資では、出資した不動産の時価が収入金額とみなされます。
そのため、法人成りの資産引継ぎでは、単に法人の現金負担を減らせるという理由だけで現物出資を選ぶのではなく、税務と設立手続きを含めて判断する必要があります。
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贈与|個人から法人へ無償で移転する
個人から法人へ資産を無償で移転する贈与という方法も考えられます。ただし、法人成りの資産引継ぎで贈与を安易に選ぶのはおすすめできません。
IDEMAE編集部
譲渡所得の対象になる土地・建物などを個人から法人へ贈与すると、個人側では時価で譲渡したものとみなされ、みなし譲渡課税が生じる可能性があります。法人側でも無償で取得した財産について受贈益などの課税関係を検討する必要があります。
つまり、「お金を受け取らなければ税金も発生しない」とは限りません。
譲渡や賃貸に比べて課税関係を判断しにくいため、贈与による法人成りの資産引継ぎを検討する場合は、事前に税理士へ確認したほうが安全です。
譲渡・賃貸・現物出資・贈与のどれを選ぶ?
法人成りの資産引継ぎ方法を選ぶ際は、方法そのものではなく資産ごとに考えることが重要です。
例えば、少額のパソコンや事務機器など法人で継続利用する資産は譲渡し、高額な不動産は個人所有のまま法人へ賃貸するなど、複数の方法を組み合わせることもできます。
ここがポイント!
判断するときは、「法人に所有権を移す必要があるか」「法人に購入資金があるか」「個人側にどのような税金が発生するか」「名義変更などの費用はいくらか」という観点から比較しましょう。
資産の種類別|法人成りでの引継ぎ方法と仕訳

法人成りの資産引継ぎは、すべて同じ方法で処理できるわけではありません。商品と車では税務上の扱いが異なり、不動産ではさらに登記や税金も関係します。
ここでは、代表的な資産ごとに法人成りの引継ぎ方法と仕訳の考え方を解説します。
商品・原材料などの棚卸資産
小売業・卸売業・製造業などでは、法人成り時点で商品、製品、原材料などの棚卸資産が残っていることがあります。法人で事業を継続するのであれば、こうした棚卸資産を個人から法人へ譲渡する方法が一般的です。
法人側では、取得した商品等を商品・仕入などとして計上します。例えば80万円の商品を法人が取得し、代金が未払いであれば、考え方としては法人側で「商品80万円/未払金80万円」などの仕訳を行います。
一方、個人側では棚卸資産の譲渡による収入は事業所得の計算に関係します。注意したいのが引継ぎ価格です。
IDEMAE編集部
法人成りしたときの資産の引継ぎについて、さらに知りたい方はこちらの記事もご参照ください。
おすすめ記事:【法人成り】個人事業の在庫はどうやって引き継げばいい?
売れ残った商品だからという理由だけで極端に低い金額を設定するのではなく、通常販売できる価額、商品の状態、型落ち・陳腐化などを踏まえて合理的に評価する必要があります。
特に在庫が多い事業では、法人成りの日を決めた段階で棚卸しを行い、数量と評価額を明確にしておくことが大切です。
車・パソコン・機械などの減価償却資産
車、パソコン、機械、製造設備、什器などの減価償却資産についても、法人へ譲渡する方法がよく利用されます。例えば、個人事業で使用していた車を法人が150万円で購入する場合、法人側では車両運搬具150万円を計上します。
現金で支払えば貸方は現金・普通預金などとなり、法人成り直後で代金をすぐ支払わない場合には未払金などを計上することが考えられます。
IDEMAE編集部
ただし、個人事業主時代の帳簿価額を、そのまま法人側へ引き継ぐわけではありません。個人から法人への譲渡は法人にとって新たな中古資産の取得となります。
中古の減価償却資産を法人が取得した場合、取得後の使用可能期間を合理的に見積もって耐用年数とすることができます。見積もりが難しい場合には、一定の簡便法によって耐用年数を算定できるケースがあります。
法定耐用年数をすでに全部経過している中古資産では法定耐用年数の20%、一部経過している場合には「法定耐用年数-経過年数+経過年数×20%」を基礎に算定し、一定の端数処理等を行います。
そのため、法人成り前の個人事業で使っていた耐用年数・未償却残高をそのままコピーして法人の固定資産台帳を作るのは適切とは限りません。
土地・建物などの不動産
法人成りの資産引継ぎで特に慎重な判断が必要なのが不動産です。不動産は金額が大きく、法人へ譲渡すると所有権移転登記のほか、登録免許税や不動産取得税などが発生する可能性があります。
IDEMAE編集部
さらに、個人側では譲渡所得の問題もあります。そのため、不動産については、「法人へ売却する」「個人所有のまま法人へ賃貸する」という2つを比較することが重要です。
法人で長期間保有したい不動産であれば譲渡を検討する余地がありますが、法人側に十分な購入資金がなかったり、移転時の税金・費用が大きかったりする場合には、個人所有のまま賃貸するほうが合理的なケースもあります。
また、消費税では土地と建物を同じように扱いません。課税事業者である個人が事業用建物や車、機械などを売却した場合、その譲渡は原則として消費税の課税対象になります。一方、土地や借地権の譲渡は消費税の非課税取引です。土地・建物を一括して法人へ売却する場合には、土地と建物の価格区分も重要になります。
売掛金・未収金・敷金などの債権
法人成り時点で個人事業の売掛金が残っているケースも少なくありません。売掛金などの債権を法人へ譲渡することも可能ですが、「会社を作ったから請求先を法人へ変更する」だけでは済まないことがあります。債権譲渡については、債務者などに対して譲渡を主張するための通知・承諾などの対抗要件も確認する必要があります。
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特に売掛金の件数が少なく、法人成り後すぐに回収できる見込みであれば、個人事業主側で最後まで回収し、法人へ引き継がない方法もあります。
一方、長期の売掛金や継続契約が多い場合は、取引先への案内と併せて債権の取扱いを整理しましょう。敷金・保証金についても、事務所の賃貸借契約そのものを法人名義へ変更できるかどうかによって処理が変わります。
少額の備品なども引継ぎ漏れに注意する
法人成りの資産引継ぎでは、高額資産ばかりに目が向きがちですが、少額の備品にも注意しましょう。過去に経費処理した机、椅子、モニター、スマートフォンなどでも、法人成り後に法人が使用するのであれば、誰の所有物なのか整理しておく必要があります。
ただし、市場価値がほとんどない古い備品まで複雑な資産売買契約を作成すると、事務負担が大きくなります。重要なのは、固定資産台帳や実物を確認し、金額的重要性も踏まえて引継ぎ対象を決めることです。
借入金・買掛金・契約・許認可は法人成りでどう引き継ぐ?

法人成りでは資産だけでなく、借入金や買掛金などの負債、事業に関する契約も整理する必要があります。特に注意したいのが、「事業を法人へ引き継いだから借入金や契約も自動で法人名義になる」と考えてしまうことです。
法人成りしたときの資産の引継ぎに関するおすすめ記事:法人成りした際の会計処理の仕方
資産の所有権移転とは別に、それぞれ必要な手続きを確認しましょう。
借入金は金融機関と債務引受の手続きが必要
個人事業主が銀行や日本政策金融公庫などから借りた事業資金は、法人を設立しただけで法人の借入金に変わるわけではありません。個人の借入金を法人へ移したい場合には、金融機関へ事前に相談し、債務引受などの方法を検討します。
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民法では、元の債務者と引受人が連帯して債務を負う「併存的債務引受」と、引受人が債務を負い元の債務者が債務を免れる「免責的債務引受」が規定されています。
金融機関との契約内容や審査によって対応は異なるため、法人成り直前になってからではなく、会社設立を検討している段階で相談しておくことが重要です。個人保証や担保を設定している場合は、その扱いについても確認しましょう。
買掛金・未払金は誰が支払うのかを明確にする
法人成り前に仕入れた商品の買掛金や、個人事業時代の経費に関する未払金も整理します。基本的には、個人事業で発生した債務は個人側で精算する方法が分かりやすいでしょう。
法人が引き受ける場合には、債権者との関係や契約内容を確認したうえで適切な処理が必要です。
IDEMAE編集部
特に「資産だけ法人へ移したのに、その資産に対応する債務は個人に残っている」といった状態になると、法人成り後の貸借関係が分かりにくくなります。
資産と負債をセットで一覧化して確認しておくことが重要です。
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賃貸借・リース・保険などの契約は名義変更を確認する
事務所の賃貸借契約、コピー機・自動車などのリース契約、各種保険契約も自動的に法人へ引継ぎできるとは限りません。契約によっては名義変更が可能な場合もあれば、新たに法人として契約を結び直す必要がある場合もあります。
ここがポイント!
法人成り後も個人名義の契約を使い続けてしまうと、経費負担者や契約責任者が分かりにくくなるため、設立前後に契約先へ確認しましょう。
許認可は制度ごとに法人への承継可否を確認する
建設業、運送業、飲食業など、許認可が必要な事業では特に注意が必要です。個人として取得した許可が、法人を設立しただけでそのまま法人へ移るとは限りません。
新たに法人名義で申請が必要な制度もあれば、一定の承継手続きが設けられている制度もあります。「個人の許可は法人に引き継げない」と一律に判断するのではなく、自社の業種に関する制度を個別に確認することが重要です。
法人成りの資産引継ぎで注意する税金・費用・手続き

法人成りの資産引継ぎでは、単に「資産を移せるか」だけではなく、「いくらで移すのか」「どの税金が発生するのか」「いつ手続きするのか」まで考える必要があります。
特に高額な資産がある場合、法人成り後に処理方法を考え始めると、選択肢が限られてしまうこともあります。
資産の引継ぎ価格は時価を基準に検討する
法人成りで資産を譲渡するときに、最も注意したいのが引継ぎ価格です。個人事業の帳簿に「車両運搬具50万円」と残っているからといって、市場価値200万円の車を必ず50万円で法人へ売却してよいわけではありません。
帳簿価額は会計上の未償却残高であり、現在の市場価値とは別の数字です。車であれば中古車市場の査定額、不動産であれば周辺の取引事例や不動産会社の査定などを参考に、合理的な価格を検討します。
IDEMAE編集部
特に法人に対する著しい低額譲渡には、時価によるみなし譲渡などの問題があります。
したがって法人成りの資産引継ぎでは、「帳簿価額」「時価」「実際の譲渡価額」の3つを区別して考える必要があります。
個人側では所得税・消費税が発生する場合がある
個人から法人へ資産を売却して利益が生じれば、資産の種類に応じて個人側の所得税計算へ影響します。棚卸資産の売却と、土地・建物など譲渡所得の対象になる資産の売却では、所得区分も同じではありません。
IDEMAE編集部
さらに、個人事業主が消費税の課税事業者である場合には、事業で使用していた建物・機械・車両などの売却が消費税の課税対象になることがあります。
法人成り直前に多数の設備を法人へ売却すると、その売却による消費税の納税負担が個人側に発生する可能性があるため、資金繰りまで確認しておくことが重要です。
法人成りすれば必ず2年間消費税が免除されるわけではない
「法人成りすれば新しい法人になるため、2年間は消費税を払わなくてよい」と説明されることがありますが、必ずしも正しくありません。
法人成り前の個人事業主と法人成り後の法人は、消費税の納税義務について別々の事業者として判定されます。個人事業主時代の課税売上高が、そのまま新法人の基準期間の課税売上高になるわけではありません。
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新設法人には基準期間がないため原則として免税事業者となるケースがありますが、資本金1,000万円以上の場合や一定の特定新規設立法人に該当する場合など、免税にならないケースがあります。適格請求書発行事業者として登録する場合も消費税の納税義務が生じます。
したがって、法人成りの資産引継ぎと消費税対策は切り離して考えず、設立時期やインボイス登録も含めて確認しましょう。
不動産の引継ぎでは登記や税金などの費用も比較する
土地・建物を法人へ移す場合は、売却価格だけでは判断できません。法人への所有権移転に伴う登録免許税、不動産取得税、司法書士報酬などが発生する可能性があります。
個人側の譲渡所得に対する税金も確認する必要があるため、「法人で不動産を持ったほうがよさそう」という理由だけで移転すると、想定以上の負担になることがあります。
ここがポイント!
不動産については、「個人のまま保有して法人へ貸す場合」「法人へ譲渡する場合」の両方について、初期費用と法人成り後の税負担を比較することが重要です。
法人成り前から資産引継ぎまでの手順
法人成りの資産引継ぎは、会社設立後にまとめて考えるよりも、設立前から準備したほうがスムーズです。
まず、個人事業の資産・負債・契約・許認可を一覧化します。次に、それぞれについて「法人へ引き継ぐ」「個人所有のまま法人へ貸す」「個人側で回収・返済する」「処分する」のいずれかを決定します。法人へ譲渡する資産については時価を確認し、必要に応じて売買契約書などを作成します。
IDEMAE編集部
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法人成り後は法人側で取得した資産を帳簿へ計上し、中古の減価償却資産については法人側で耐用年数を確認します。最後に、個人事業側の確定申告と法人側の決算で、それぞれ正しく処理できているか確認しましょう。
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税理士など専門家へ依頼したほうがよいケース
資産がほとんどなく、少額のパソコンや備品程度であれば、法人成りの資産引継ぎは比較的整理しやすいでしょう。
IDEMAE編集部
一方で、不動産、高額な車・機械、大量の在庫、借入金などがある場合には、法人設立前に税理士などへ相談することをおすすめします。
特に、「資産の時価が分からない」「課税事業者である」「不動産を法人へ移すか迷っている」「借入金が残っている」
「インボイス登録後に法人成りする」といったケースでは、法人設立後ではなく設立前に確認することが重要です。
法人成りでは資産引継ぎだけでなく、会社設立、法人税務、会計処理、給与計算、社会保険なども同時に発生します。
会計事務所SoVaでは、記帳業務や給与計算だけではなく、社会保険などの役所手続き、さらには助成金・補助金や節税アドバイスを 29,800円〜丸ごとお任せいただくことが可能 です。バックオフィス業務が面倒だと感じている方は、ぜひ会計事務所SoVaにお任せください!
税務・労務・経理をそれぞれ別の専門家へ相談する方法もありますが、法人成り前から設立後まで一つの窓口で対応できる専門家へ依頼すれば、手続き漏れや情報共有の手間を抑えやすくなります。
法人成りの資産引継ぎに関するQ&A

法人成りの資産引継ぎでは、「借入金はどうするのか」「帳簿価額で売ってよいのか」「消費税は免除されるのか」など、資産ごとに判断しなければならない疑問が多くあります。
ここでは、法人成りの資産引継ぎに関して特に疑問になりやすいポイントをQ&A形式で解説します。
Q.法人成りする際の資産はすべて法人へ引き継ぐ必要がありますか?
すべて法人へ引き継ぐ必要はありません。法人成り後に法人が使用する資産でも、個人から法人へ譲渡する方法だけでなく、個人所有のまま法人へ貸す方法があります。
例えば、不動産は法人へ売却すると税金や登記費用が発生する可能性があるため、個人所有を維持して法人へ賃貸するケースもあります。
IDEMAE編集部
法人成りの資産引継ぎでは、資産ごとに「譲渡する」「貸す」「処分する」「個人で保有する」を判断しましょう。
Q.法人成りする際の借入金は法人へ引き継げますか?
金融機関との調整によって法人へ引き継げる場合がありますが、法人成りしただけで借入金の債務者が個人から法人へ変わるわけではありません。
併存的債務引受や免責的債務引受などの方法が考えられますが、金融機関との契約・承諾等が関係します。法人成り予定で個人事業の借入金が残っている場合は、会社設立前に借入先へ相談しましょう。
Q.資産は帳簿価額で法人へ売却しても問題ありませんか?
必ずしも帳簿価額で問題ないとは限りません。帳簿価額は減価償却後の会計上の残高であり、その資産の現在の市場価値である時価とは異なります。
特に土地・建物や市場価値の高い車などを法人へ著しく低い価額で譲渡した場合には、税務上、時価による譲渡として扱われる可能性があります。
法人成りしたときの資産の引継ぎに関するおすすめ記事
法人成りの資産引継ぎでは、帳簿価額だけではなく時価を確認して譲渡価格を決めることが重要です。
Q.個人所有の不動産を法人へ売却せず使用できますか?
可能です。個人が所有する土地・建物を法人へ賃貸し、法人が個人へ賃料を支払う方法があります。
法人へ不動産を譲渡すると、所得税や登記に関する費用、不動産取得税などが関係するため、必ずしも法人所有へ変更したほうが有利とは限りません。
譲渡と賃貸のどちらが適しているかは、不動産の時価、取得費、法人の資金力、将来の売却予定などを含めて判断します。
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Q.売掛金を法人へ引き継ぐことはできますか?
売掛金などの債権を法人へ譲渡することは可能です。ただし、取引先に対する通知など、債権譲渡に関する手続きを確認する必要があります。
法人成り時点で残っている売掛金が少額で短期間に回収できるのであれば、個人事業主側で最後まで回収する方法もあります。
気をつけておきたい注意点
法人成り前後の売上を混同しないよう、「個人事業時代の売掛金」と「法人設立後の売掛金」を明確に区分して管理しましょう。
Q.法人成りすると消費税は免除されますか?
法人成りしたからといって、必ず消費税が免除されるわけではありません。個人事業主と新設法人は消費税の納税義務を別々に判定するため、新設法人には基準期間がなく、原則として免税となるケースがあります。
IDEMAE編集部
ただし、資本金、特定新規設立法人に関する要件、特定期間の判定、適格請求書発行事業者への登録などによって課税事業者になることがあります。
また、法人成り前の個人が課税事業者であり、事業用資産を法人へ売却する場合には、個人側の消費税にも注意が必要です。
Q.法人化したほうがいい年収・所得はいくらですか?
「所得が○万円を超えれば必ず法人成りしたほうがよい」という一律の基準はありません。法人成りによる税負担は、個人の所得税率だけでなく、法人税、役員報酬、社会保険料、家族への給与、消費税などによって変わります。
さらに、今回解説した資産引継ぎに伴う税金や費用も考慮する必要があります。現在の利益だけではなく、今後の売上・利益、保有資産、社会保険料まで含めてシミュレーションすることが重要です。
Q.法人成りの資産引継ぎは税理士へ相談したほうがよいですか?
不動産や高額な固定資産、多額の在庫、借入金などがある場合は、法人成り前に税理士へ相談することをおすすめします。
法人成りの資産引継ぎは、「何を法人へ移すか」だけでなく、「譲渡と賃貸のどちらを選ぶか」「いくらで引き継ぐか」「所得税や消費税はいくら発生するか」まで考える必要があります。
IDEMAE編集部
法人成りしたときの資産の引継ぎについて、さらに詳しく知りたい方はこちらの記事もご参照ください。
また、法人設立後には税務だけでなく、経理や社会保険、給与計算などの手続きも始まります。
法人成りをスムーズに進めたい場合には、会社設立だけを依頼するのではなく、資産引継ぎから設立後の税務・労務・経理までまとめて相談できる専門家を選ぶとよいでしょう。
まとめ|法人成りの資産引継ぎは資産ごとに方法・価格・税金を確認しよう

法人成りの資産引継ぎでは、個人事業で所有している資産が自動的に法人へ移るわけではありません。商品・在庫、車、パソコン、機械、不動産などを法人で引き続き使用する場合は、譲渡・賃貸・現物出資などから適切な資産引継ぎ方法を選ぶ必要があります。
法人成りしたときの資産の引継ぎに関するおすすめ記事
特に重要なのが、法人へ引き継ぐ資産の価格です。個人事業時代の帳簿価額をそのまま使えばよいとは限らず、時価や税務上の取扱いを確認しなければなりません。また、個人側では所得税・消費税、法人側では取得価額や減価償却などを確認する必要があります。
さらに、借入金、売掛金、賃貸借契約、リース、許認可などは、法人成りによって自動的に法人へ引継ぎできるとは限りません。
IDEMAE編集部
法人成りを予定している場合は、会社設立後に慌てて資産を整理するのではなく、設立前に「資産・負債・契約・許認可」を一覧化しておくことが重要です。
不動産や高額な資産、借入金などがある場合には、法人成り前から税理士などの専門家へ相談し、資産引継ぎによる税金と設立後の税務・労務・経理まで含めて準備しておきましょう。
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