労務 役員報酬

期の途中から就任した役員の役員報酬はどうする?支給開始・日割り・損金算入を解説

更新日:2026.07.30

事業拡大や経営体制の変更に伴い、事業年度の期の途中から新しい取締役を選任したり、従業員を役員へ昇格させたりすることがあります。このとき問題になりやすいのが、期の途中から就任した役員の役員報酬をいつから、いくら支給すればよいのかという点です。

「期の途中から就任した役員の役員報酬は、就任月から満額を支給するのか」「月の途中で就任した場合は日割りできるのか」「期首から3カ月を過ぎていると損金算入できないのか」など、判断に迷う経営者や経理担当者は少なくありません。

役員報酬は、従業員の給与と同じ感覚で自由に増減すると、法人税の計算上、損金に算入できなくなる可能性があります。特に、期の途中から就任した役員の役員報酬については、新任役員への初回設定なのか、既存役員の役員報酬を変更するのかによって考え方が異なります。

また、税務上の定期同額給与だけでなく、株主総会などによる報酬決議、役員変更登記、社会保険の資格取得、給与計算、源泉徴収といった手続きを一体的に進めなければなりません。

本記事では、期の途中から就任した役員の役員報酬について、支給開始時期、日割り計算、定期同額給与、損金算入の条件を詳しく解説します。外部から新たに役員が就任するケース、従業員から役員へ昇格するケース、既存役員が代表取締役へ昇格するケースなど、状況別の判断方法も確認していきましょう。

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期の途中から就任した役員の役員報酬はいつから支給する?

期の途中から就任した役員の役員報酬は、就任時に報酬月額、支給開始時期、支給日を正式に決定し、決議した内容に沿って支給することが基本です。

事業年度の途中で役員に就任したからといって、翌期まで役員報酬を支給できないわけではありません。期の途中から就任した役員であっても、就任後の各支給時期における役員報酬を同額とし、定期同額給与の要件を満たせば、原則として損金算入を検討できます。

ただし、月の途中から就任した場合には、就任月から満額を支給する方法、就任月だけ日割りにする方法、翌月分から支給する方法が考えられます。それぞれ税務上のリスクが異なるため、単に在任日数だけで判断してはいけません。

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結論|就任時に役員報酬の金額と支給開始時期を決める

期の途中から就任した役員の役員報酬は、役員の就任と同時または就任前後の適切な時期に、次の内容を明確に決めておく必要があります。

  • 役員報酬の月額
  • 役員報酬が発生する月
  • 毎月の支給日
  • 就任月を満額支給とするか
  • 就任月を無報酬とするか
  • 担当する職務と責任
  • 報酬額の決定機関

特に重要なのが、「支給対象月」と「実際の支給日」を分けて考えることです。

例えば、8月15日に役員へ就任し、毎月末締め翌月25日払いとしている会社を考えてみましょう。8月分の役員報酬を9月25日に支給する場合、実際に振り込む日は翌月ですが、役員報酬の対象となっているのは8月です。

一方、8月分の役員報酬は発生させず、9月分から役員報酬を設定し、10月25日に初回支給する場合は、「翌月払い」ではなく「翌月分から報酬を発生させる」という処理になります。この2つは意味が異なります。

期の途中から就任した役員の役員報酬を翌月に振り込んだからといって、直ちに問題になるわけではありません。問題になるのは、いつの職務に対応する役員報酬なのか、株主総会などでどのように決議されているのか、会計上いつ債務として認識しているのかが曖昧な場合です。

月の途中で就任した場合は満額・日割り・翌月開始のどれを選ぶ?

月の途中から役員に就任した場合、実務上は次の3つの方法が考えられます。

支給方法 税務上の考え方 主な注意点
就任月から満額を支給する 就任後の役員報酬を毎月同額にしやすい 在任日数が少なくても1カ月分を支給することになる
就任月だけ日割りにする 初月と翌月以降の金額が異なる 定期同額給与に該当しないリスクがある
就任月は無報酬とし翌月分から支給する 決議内容によっては整理できる可能性がある 就任月を無報酬とする根拠や報酬発生時期を明確にする必要がある

税務上の説明が比較的しやすいのは、就任月から満額の役員報酬を設定し、その後も同額を支給する方法です。

例えば、8月15日に取締役へ就任し、役員報酬を月額30万円と決めた場合、8月分から30万円、9月分も30万円、10月分も30万円と支給します。就任後の各月の役員報酬が同額になるため、定期同額給与との整合性を保ちやすくなります。

IDEMAE編集部

ただし、役員報酬は会社法上、職務執行の対価として決定されるものです。在任期間が半月しかないにもかかわらず1カ月分を支給することについて、株主や他の役員へ合理的に説明できるかも確認しなければなりません。

一方、就任月を無報酬として翌月分から毎月同額を支給する方法も、直ちに認められないとは限りません。就任時の決議において「役員報酬は翌月分から月額30万円とする」など、報酬の発生時期を明確にしていることが重要です。

すでに就任月から役員報酬を支給すると決議したにもかかわらず、資金繰りの都合で支給を翌月以降へ遅らせただけであれば、単なる無報酬ではなく未払役員報酬として扱う必要が生じます。決議内容と実際の処理を一致させることが重要です。

期の途中から就任した役員報酬の日割りは避けたほうがよい

役員報酬について、「法律上、日割り計算が一切禁止されている」と定められているわけではありません。しかし、期の途中から就任した役員の役員報酬を就任月だけ日割りにすると、初月と翌月以降の支給額が異なります。

国税庁は、定期同額給与について、支給時期が1カ月以下の一定期間ごとであり、事業年度の各支給時期における支給額が同額である給与などと説明しています。毎月の役員報酬が同額でない場合、定期同額給与に該当せず、支給差額などが損金不算入になる可能性があります。

例えば、役員報酬を月額30万円とし、8月15日就任で8月分だけ15万円、9月以降は30万円とした場合、8月と9月以降の支給額に差が生じます。

この処理は、形式的には8月から9月にかけて役員報酬を増額したようにも見えます。通常の改定や臨時改定事由に該当しなければ、増額部分の損金算入が否認されるリスクがあります。

期の途中から就任した役員報酬についてはここがポイント!

税理士_依頼_おすすめのポイント

期の途中から就任した役員の役員報酬について日割りを避けるべきといわれるのは、在任日数で計算すること自体が違法だからではありません。初月と翌月以降の金額が変わり、定期同額給与の要件を満たさなくなる可能性があるからです。

期首から3カ月を過ぎていても新任役員の報酬は設定できる

役員報酬は、原則として事業年度開始日から3カ月以内に決めなければならないと説明されることがあります。

ただし、この3カ月ルールは、すでに支給している定期給与の額を通常改定する場合のルールです。国税庁は、事業年度開始の日から3カ月を経過する日までに行われた定期給与の改定などを、定期同額給与として認められる改定の一つに挙げています。

一方、初めて役員に期の途中から就任した人は、就任前にその会社から役員報酬を受け取っていません。そのため、新任役員への役員報酬の設定は、既存役員の役員報酬を増額または減額する「改定」とは分けて考える必要があります。

例えば、3月決算の会社が10月に外部人材を新たな取締役として選任した場合、期首から3カ月を過ぎていることだけを理由に、翌年4月まで無報酬にしなければならないわけではありません。

IDEMAE編集部

就任時に役員報酬の月額と支給開始時期を正式に決定し、就任後の各支給時期に同額を支給することが重要です。

ただし、役員就任より前から経営に関与していた人へ過去分をまとめて支給する場合や、役員に就任した後、数カ月経過してから遡って役員報酬を決議する場合は注意が必要です。事実関係によっては、役員報酬の遡及決定や利益調整と判断される可能性があるため、就任時点で処理を固めておきましょう。

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期の途中から就任した役員報酬を損金算入する条件

期の途中から就任した役員の役員報酬を会社の損金に算入するには、法人税法上の役員給与のルールを満たす必要があります。

法人が役員へ支給する給与のうち、原則として損金算入できるのは、定期同額給与、事前確定届出給与、一定の業績連動給与のいずれかに該当するものです。いずれにも該当しない役員給与や、不相当に高額な部分については損金算入が認められません。

中小企業が毎月支給する役員報酬については、定期同額給与に該当するかどうかが中心的な判断基準になります。

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定期同額給与とは

定期同額給与とは、原則として1カ月以下の一定期間ごとに支給され、事業年度の各支給時期における支給額が同額である役員給与です。

例えば、毎月25日に月額30万円を支給する役員報酬は、金額を変更せず継続していれば、基本的には定期同額給与の形式を満たします。

期の途中から就任した役員の役員報酬については、就任前に役員報酬の支給時期が存在していたわけではありません。そのため、基本的には就任後の支給対象月から事業年度末まで、毎月同額で支給できているかを確認します。

次のような処理は注意が必要です。

  • 就任月だけ日割りにする
  • 会社の利益に応じて毎月金額を変える
  • 資金繰りが苦しい月だけ減額する
  • 売上が増えたため翌月から増額する
  • 決議額と実際の振込額が異なる
  • 数カ月分をまとめて不規則に支給する

IDEMAE編集部

国税庁は、一定の算定基準に基づいて規則的に支給する場合であっても、各月の支給額が同額でなければ、原則として定期同額給与には該当しないと示しています。

売上や利益に連動する歩合給を役員へ支給する場合も、定期同額給与として損金算入することは難しくなります。

新任役員の報酬設定と既存役員の期中変更は異なる

期の途中から就任した役員の役員報酬を判断する際は、新任役員への初回設定と、既存役員の役員報酬変更を区別することが重要です。

期の途中から就任した役員報酬については

期の途中から就任した役員報酬については

期の途中から就任した役員報酬については

期の途中から就任した役員報酬については

期の途中から就任した際の役員報酬はここがポイント!

税理士_依頼_おすすめのポイント

外部から新たに取締役へ就任した人や、従業員から初めて取締役へ就任した人について役員報酬を決める行為は、通常、新任役員への初回設定として整理します。

これに対して、すでに取締役として月額30万円の役員報酬を受け取っている人について、事業年度の途中から月額50万円にする行為は、既存の定期給与の改定です。

両者を同じ「期中変更」として扱うと、「期首から3カ月を過ぎたら新任役員にも役員報酬を支給できない」といった誤解につながります。

既存役員の役員報酬を通常改定できるのは、原則として事業年度開始の日から3カ月以内です。それ以外の時期に変更する場合は、臨時改定事由や業績悪化改定事由など、法人税法上認められる理由が必要になります。

臨時改定事由が認められるケース

臨時改定事由とは、役員の職制上の地位の変更、役員の職務内容の重大な変更、その他これらに類するやむを得ない事情により、定期給与を改定する場合をいいます。

代表的な例として、既存の取締役が代表取締役へ就任し、経営責任や業務量が大幅に増えたケースがあります。

例えば、代表取締役が急病により職務を継続できなくなり、別の取締役が事業年度の途中から代表取締役へ就任した場合、職制上の地位と職務内容に重大な変更が生じています。このような場合は、臨時改定事由に基づく役員報酬の増額を検討できます。

国税庁も、役員の分掌変更に伴って職務内容や責任が大きく変わった場合、一定の要件を満たせば、増額改定前と増額改定後のそれぞれの給与を定期同額給与として扱う例を示しています。

ただし、単に売上が増えた、利益が予想を上回った、役員本人が増額を希望したという理由では、臨時改定事由には該当しません。

期の途中から就任した際に気をつけておきたい注意点

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肩書が変わった場合でも、実際の職務内容や責任がほとんど変わっていなければ、臨時改定事由として認められない可能性があります。議事録には肩書の変更だけでなく、担当業務、決裁権限、経営責任、部門管理など、具体的に何が変わったのかを記載する必要があります。

不相当に高額な役員報酬は損金算入できない

期の途中から就任した役員の役員報酬が毎月同額であっても、金額が不相当に高額な場合、その高額な部分は損金算入できません。

役員報酬の相当性を判断するときは、単に会社が支払える金額かどうかだけでなく、次のような要素を総合的に確認します。

  • 役員の職務内容
  • 経営責任の重さ
  • 会社の売上や利益
  • 会社の従業員数や事業規模
  • 同業・同規模法人の役員報酬
  • 他の役員との報酬バランス
  • 就任前の給与水準
  • 実際の勤務状況

国税庁は、定期同額給与などに該当する役員給与であっても、不相当に高額な部分は損金算入できないとしています。

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期の途中から就任した役員の役員報酬について、さらに詳しく知りたい方はこちらの記事もご参照ください。

おすすめ記事:役員報酬の支給・就任後の変更タイミングについて解説

例えば、ほとんど経営に関与しない非常勤役員へ、常勤の代表取締役を大幅に上回る役員報酬を支給している場合は、金額の合理性を説明しにくくなります。

期の途中から就任した役員の役員報酬を決める際は、節税効果だけでなく、職務内容や会社規模との均衡も確認しましょう。

ケース別|期の途中から就任した役員報酬の決め方

期の途中から就任した役員の役員報酬は、就任前の立場や就任後の職務によって判断が変わります。

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特に、外部から新しく役員になるケース、従業員から役員へ昇格するケース、すでに役員である人が代表取締役へ昇格するケースを混同しないことが重要です。

外部から新たに取締役へ就任するケース

外部の専門人材や取引先の経営者などを、期の途中から新たな取締役として迎えるケースです。就任前にその会社から役員報酬を受け取っていないため、就任時に新たな役員報酬を設定します。

例えば、3月決算の会社が10月1日付で新しい取締役を選任し、月額40万円の役員報酬を支給する場合、10月分から翌年3月分まで毎月40万円を支給する設計が考えられます。

必要なのは、次の内容を就任時に確定させることです。

  • 就任日
  • 役員報酬月額
  • 支給対象となる最初の月
  • 実際の支給日
  • 担当する職務
  • 報酬決定の根拠

事業年度の途中で就任したことだけを理由に、臨時改定事由を使う必要はありません。臨時改定事由は、主にすでに役員報酬を受け取っている既存役員の地位や職務が変わり、その報酬を改定する場合に問題となります。

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従業員から役員へ昇格するケース

従業員として勤務していた人が、取締役へ期の途中から就任する場合は、従業員給与と役員報酬の切り替えを明確にする必要があります。

例えば、8月15日付で部長から取締役へ就任する場合、8月14日までの従業員としての職務と、8月15日以降の役員としての職務をどのように処理するかが問題になります。

従業員給与は、原則として労働日数や勤務時間に応じた日割り計算ができます。一方、役員報酬は定期同額給与の要件を考慮する必要があるため、同じ方法で安易に日割りしてはいけません。

実務上は、次のような処理を検討します。

  • 就任月まで従業員給与を支給し、翌月分から役員報酬へ切り替える
  • 就任日前までの従業員給与と、就任月からの役員報酬を区分して支給する
  • 就任月から役員報酬を満額支給し、従業員給与との重複を調整する
  • 使用人兼務役員として使用人給与と役員報酬を区分する

どの方法が適切かは、給与締め日、就任日、社内の給与規程、役員の職務内容によって変わります。

注意したいのが、従業員給与と役員報酬を根拠なく二重に支給することです。例えば、8月分の従業員給与を満額支給しながら、同じ8月分について役員報酬も満額支給すると、職務の重複や報酬額の合理性を説明できない場合があります。

株主総会議事録や給与台帳では、いつまでが従業員給与で、いつからが役員報酬なのかを明確にしておきましょう。

既存役員が代表取締役へ昇格するケース

すでに取締役として役員報酬を受け取っている人が、代表取締役へ期の途中から就任する場合は、新任役員への初回設定ではなく、既存役員の役員報酬改定として考えます。

この場合、事業年度開始日から3カ月を過ぎて役員報酬を増額するには、代表取締役への就任が臨時改定事由に該当するかを確認します。

代表取締役になることで、次のような変更があれば、臨時改定事由を説明しやすくなります。

  • 会社を代表して契約を締結する権限を持つ
  • 最終的な経営判断を行う
  • 資金調達や金融機関対応を担当する
  • 全社の売上・利益に責任を負う
  • 従業員や他の役員を統括する
  • 重要な取引について決裁する

期の途中から就任した際の役員報酬で気をつけておきたい注意点

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名目上の代表取締役就任にすぎず、従来と職務内容がほとんど変わらない場合は、役員報酬の大幅な増額を正当化できない可能性があります。

「代表取締役になったため月額30万円から60万円に変更する」とだけ議事録に記載するのではなく、職務内容や責任の変化を具体的に残すことが重要です。

使用人兼務役員になるケース

使用人兼務役員とは、取締役などの役員でありながら、部長、支店長、工場長など、従業員としての職務も担当する役員です。

使用人兼務役員に支給する給与は、役員としての職務に対する役員報酬と、使用人としての職務に対する給与に区分できる場合があります。

使用人としての職務に対する給与は、役員報酬に適用される定期同額給与の規制とは異なる扱いを受ける可能性があります。国税庁も、使用人兼務役員へ支給する使用人としての職務に対する給与については、不相当に高額でない限り、原則として損金算入できると示しています。

ただし、代表取締役、代表執行役、専務取締役など、会社の経営に専ら従事する一定の役員は、通常、使用人兼務役員には該当しません。

使用人兼務役員として処理する場合は、役員部分と使用人部分について、職務内容、給与規程、賞与計算、会計科目を明確に分ける必要があります。

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非常勤役員・無報酬役員として就任するケース

期の途中から就任した役員の役員報酬を必ず支給しなければならないわけではありません。非常勤役員や社外取締役などについて、株主総会などの決議により無報酬とすることも可能です。

ただし、無報酬役員として就任した後、会社の利益が増えたため、事業年度の途中から突然役員報酬を支給し始めると、定期同額給与の要件が問題になります。

IDEMAE編集部

当初の決議が無報酬であったにもかかわらず、期中から有報酬へ変更する場合は、職務内容の重大な変更など、臨時改定事由に該当する事情があるかを確認しなければなりません。

また、名目上は無報酬でも、会社が個人的な家賃、生命保険料、私的な飲食費などを継続的に負担している場合は、役員に対する経済的利益として給与課税される可能性があります。継続的に供与する経済的利益についても、毎月おおむね一定でなければ定期同額給与に該当しない場合があります。

役員に期の途中から就任するときの手続きと必要書類

期の途中から就任した役員の役員報酬を損金算入するには、毎月同額を支給するだけでは不十分です。

役員の選任、役員報酬の決定、議事録の作成、役員変更登記、社会保険、給与計算、源泉徴収まで、手続きを一貫させる必要があります。

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株主総会などで役員の選任と報酬を決議する

株式会社で新たな取締役を選任する場合、原則として株主総会の決議が必要です。

また、取締役の報酬について、定款に金額などの定めがない場合は、会社法上、株主総会の決議によって定めることが原則です。会社の機関設計や決議内容によっては、株主総会で役員報酬の総額を決め、個別の配分を取締役会などへ委任する方法もあります。

期の途中から就任した役員の役員報酬を決める場合は、役員選任の決議と報酬決議を同じ株主総会で行うと、就任日と役員報酬の支給開始時期を整理しやすくなります。

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期の途中から就任した役員の役員報酬について、さらに詳しく知りたい方はこちらの記事もご参照ください。

おすすめ記事:役員就任後いつから役員報酬を支給する?報酬額の決め方と注意点も解説!

例えば、議事録では次の内容を明らかにします。

  • 役員の氏名
  • 就任日
  • 役職
  • 担当職務
  • 役員報酬月額
  • 報酬が発生する月
  • 支給日
  • 決議日
  • 個別配分の決定者

合同会社の場合は、株式会社の株主総会と同じ仕組みではありません。定款、社員の同意、業務執行社員の決定方法などを確認し、会社形態に合った手続きを行う必要があります。

株主総会議事録・取締役会議事録を作成する

期の途中から就任した役員の役員報酬について税務調査で確認される場合、重要になるのが議事録です。議事録には、単に「役員報酬を月額30万円とする」と記載するだけでなく、いつから支給するのかを明記します。

例えば、次のように具体化します。

「令和○年8月15日付で取締役に就任する○○氏の役員報酬を月額30万円とし、令和○年8月分から毎月25日に支給する」

翌月分から支給する場合は、「令和○年9月分から支給する」など、就任月が無報酬であることが分かる内容にします。既存役員が代表取締役へ昇格し、役員報酬を増額する場合は、増額理由も記載します。

期の途中で就任した際の役員報酬はここがポイント!

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「代表取締役の退任に伴い、経営判断、金融機関対応、全社管理を新たに担当することとなったため」など、職務内容の重大な変更が分かるようにすることが重要です。

議事録は、税務調査が始まってから作成するのではなく、実際に決議した時点で作成し、保存しなければなりません。議事録の日付、役員就任日、登記申請日、給与台帳、銀行振込日が大きく食い違っていると、後から作成した議事録ではないかと疑われる可能性があります。

役員変更登記を2週間以内に行う

新しい取締役が就任した場合は、役員変更登記が必要です。

株式会社の役員変更登記は、登記すべき事由が発生したときから、本店所在地において原則2週間以内に申請しなければなりません。期限を過ぎても申請自体は可能ですが、登記を怠った代表者に過料が科される可能性があります。

役員変更登記では、会社の機関設計や就任する役員によって、次のような書類が必要になります。

  • 株主総会議事録
  • 株主リスト
  • 就任承諾書
  • 本人確認証明書
  • 取締役会議事録
  • 印鑑証明書
  • 登記申請書

役員報酬の決定と役員変更登記は別の手続きですが、同じ就任日を基礎として進めます。

役員報酬の議事録では8月1日就任となっている一方、登記上は9月1日就任となっているなど、日付が一致していない場合は、役員報酬の支給根拠を説明しにくくなります。

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登記について不明点がある場合は、司法書士へ確認しましょう。

給与計算・源泉徴収・会計処理を開始する

役員報酬は、所得税法上、給与所得に該当します。会社は役員報酬を支給する際、原則として所得税と復興特別所得税を源泉徴収します。

期の途中から就任した役員については、次の情報を給与計算へ反映させます。

  • 役員報酬月額
  • 社会保険料
  • 扶養控除等申告書の提出状況
  • 主たる給与か従たる給与か
  • 源泉徴収税額
  • 住民税の徴収方法
  • 初回支給日

他の勤務先へ給与所得者の扶養控除等申告書を提出している役員については、一般的に自社から支給する役員報酬が従たる給与となり、源泉徴収税額表の乙欄を使用することがあります。2カ所以上から給与を受ける場合は、主たる給与と従たる給与を区分する必要があります。

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決議した支給日に役員報酬を支払えず、未払役員報酬となった場合、源泉徴収は原則として実際に支払う際に行います。

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ただし、未払計上を繰り返すと、役員報酬の支給実態や会社の資金繰りについて確認される可能性があるため注意が必要です。

会計上は、役員報酬、預り金、法定福利費、未払金などの科目を適切に使用し、給与台帳と総勘定元帳を一致させましょう。

期中就任で見落としやすい社会保険・税務上の注意点

期の途中から就任した役員の役員報酬を決めると、法人税だけでなく社会保険料や個人の所得税にも影響します。

特に、外部から新たに役員を迎える場合と、すでに従業員として社会保険へ加入している人が役員へ昇格する場合では、必要な手続きが異なります。

新たに社会保険へ加入する場合は資格取得届を提出する

法人事業所は、原則として健康保険・厚生年金保険の適用事業所です。法人の代表者や役員も、法人に常時使用され、経営への継続的な参画や経常的な労務提供があり、その対価として役員報酬を受けている場合は、社会保険の加入対象になります。

期の途中から就任した役員が新たに被保険者となる場合は、被保険者資格取得届を提出します。

日本年金機構は、被保険者を雇用した日から5日以内に資格取得届を提出するものと案内しています。資格取得時には、就業規則や契約、報酬決議などに基づく報酬月額を届け出て、標準報酬月額が決定されます。

期の途中で就任した際の役員報酬で気をつけておきたい注意点

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月の途中で役員に就任した場合でも、健康保険・厚生年金保険料は原則として日割り計算されません。資格取得月の保険料が発生するため、役員報酬の手取りや会社負担を試算するときは注意が必要です。

一方、無報酬役員で、社会保険上の被保険者となる人がほかにいない場合は、適用事業所の要件を満たさないケースがあります。役員という肩書だけで判断せず、報酬の有無や勤務実態を確認しましょう。

従業員から役員へ昇格した場合は月額変更届を確認する

すでに従業員としてその会社の社会保険へ加入している人が役員へ昇格した場合、役員就任だけを理由に資格喪失届と資格取得届を出し直すとは限りません。

ただし、従業員給与から役員報酬へ切り替わり、固定的賃金が大きく変わる場合は、随時改定による月額変更届の対象になる可能性があります。

随時改定は、主に次の条件を満たす場合に行われます。

  • 基本給などの固定的賃金が変動した
  • 変動後3カ月間の報酬をもとに算定した標準報酬月額と従前の標準報酬月額に原則2等級以上の差がある
  • 変動後の各月について支払基礎日数などの要件を満たす

条件を満たす場合、変動後の報酬を初めて受けた月から起算して4カ月目の標準報酬月額から改定されます。

税務上の定期同額給与と、社会保険上の随時改定は別の制度です。

「税務上は役員報酬を変更できたため、社会保険もすぐ同じ月から変更される」とは限りません。反対に、税務上の役員報酬変更が認められない場合でも、実際に固定的賃金が変動していれば、社会保険上の月額変更届が必要になることがあります。

税務と社会保険の処理を別々の担当者が行う場合は、情報共有の漏れに注意しましょう。

複数の会社から役員報酬を受け取る場合は届出が必要になる

別法人の役員へ期の途中から就任し、複数の会社から役員報酬を受け取る場合は、社会保険と源泉所得税の両方で特別な確認が必要です。複数の適用事業所で被保険者となる要件を満たす場合は、「被保険者所属選択・二以上事業所勤務届」を提出します。

社会保険料の計算では、それぞれの事業所から受け取る報酬月額を合算して標準報酬月額を決定し、各事業所の報酬月額に応じて保険料を按分します。

例えば、A社から月額40万円、期の途中から就任したB社から月額20万円の役員報酬を受け取る場合、社会保険では単純にそれぞれ別々の標準報酬月額を適用するわけではありません。

源泉所得税についても、扶養控除等申告書を提出する主たる勤務先を一つに決め、もう一方の会社では従たる給与として処理するのが一般的です。年末調整だけでは精算が完了せず、確定申告が必要になることもあります。

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役員賞与を支給する場合は事前確定届出給与を確認する

期の途中から就任した役員へ、毎月の役員報酬とは別に賞与を支給したい場合は注意が必要です。

期の途中で就任した際の役員報酬はここがポイント!

税理士_依頼_おすすめのポイント

役員賞与は、単に株主総会で支給を決めただけでは、原則として損金算入できません。所定の時期に確定した金額を支給する旨を事前に定め、税務署へ期限内に届け出る事前確定届出給与などの要件を満たす必要があります。

事前確定届出給与の届出期限は、原則として、支給額などを決議した日から1カ月を経過する日と、職務執行期間が始まる会計期間の開始日から4カ月を経過する日のうち、早い日です。新たに役員へ就任する人については、職務執行開始日がいつになるのかを含めて確認する必要があります。

届出を行った場合でも、届出書に記載した支給日や金額と実際の支給内容が異なると、事前確定届出給与として認められない可能性があります。複数回の役員賞与を定めている場合、一部だけ金額や支給日が異なることで、支給全体が損金不算入になる場合もあります。

期中就任した役員へ賞与を支給する場合は、支給を決めてから相談するのではなく、決議前に税理士へ確認しましょう。

専門家へ依頼する場合は料金だけでなく対応範囲を比較する

期の途中から就任した役員の役員報酬については、税務、労務、登記、給与計算が同時に発生します。

主な専門家の対応範囲は、次のように異なります。

税理士は、定期同額給与、損金算入、役員報酬額、源泉所得税、法人税申告などを担当します。社会保険労務士は、資格取得届、月額変更届、二以上事業所勤務届、給与計算などの労務手続きを扱います。司法書士は、役員変更登記を担当します。

そのため、専門家を選ぶ際は、月額顧問料の安さだけでなく、次の項目を確認することが重要です。

  • 役員報酬のシミュレーションに対応しているか
  • 株主総会議事録の作成について助言を受けられるか
  • 給与計算まで任せられるか
  • 社会保険手続きに対応しているか
  • 役員変更登記を行う司法書士と連携しているか
  • 税務・労務・経理の情報を一元管理できるか
  • 税務調査時に決議内容を説明できるか

税務、労務、経理を別々の事務所へ依頼すると、就任日や報酬額の共有漏れが発生する可能性があります。

例えば、税理士へは役員報酬の変更を伝えたものの、社会保険労務士へ情報が共有されず、月額変更届の提出が遅れるケースが考えられます。反対に、給与計算だけ先に変更し、株主総会議事録が作成されていなければ、税務上の根拠が不足します。

IDEMAE編集部

期の途中から就任した役員の役員報酬を安全に処理したい場合は、税務・労務・経理を一つの窓口で確認できるかも比較しましょう。

期の途中から就任した役員の役員報酬に関するQ&A

期の途中から就任した役員の役員報酬については、就任日や支給開始時期によって判断が変わります。ここでは、期中就任の役員報酬についてよくある疑問をQ&A形式で解説します。

Q.期首から3カ月を過ぎて役員に就任しても役員報酬を経費にできますか?

期首から3カ月を過ぎた後に新たな役員が就任した場合でも、役員報酬を損金算入できる可能性があります。

3カ月ルールは、主に既存の定期給与を通常改定する場合のルールです。新任役員への初回設定とは分けて考え、就任時に役員報酬の金額と支給開始時期を決議し、その後の各支給時期に同額を支給することが重要です。

Q.月の15日に就任した場合、役員報酬は日割りできますか?

役員報酬の日割り計算そのものが直接禁止されているわけではありません。

ただし、就任月だけ日割り額とし、翌月以降を満額にすると、各支給時期の役員報酬が同額ではなくなります。定期同額給与に該当しないリスクがあるため、就任月から満額を支給する方法や、決議により翌月分から支給する方法を検討します。

IDEMAE編集部

期の途中から就任した役員の役員報酬について、さらに詳しく知りたい方はこちらの記事もご参照ください。

おすすめ記事:役員報酬は期中で変えられない?「定期同額給与」の絶対ルールと例外3パターン【完全版】

Q.就任月を無報酬にして翌月から役員報酬を支給できますか?

就任時の決議で、翌月分から役員報酬を支給することを明確に定めていれば、整理できる可能性があります。

ただし、就任月から報酬を支給すると決議していたにもかかわらず、実際に支払わなかった場合は、無報酬ではなく未払役員報酬となることがあります。就任月を無報酬とする理由、支給対象月、給与締め日を議事録で明確にしましょう。

Q.従業員から役員になった月は給与と役員報酬の両方を支給できますか?

従業員として勤務した期間に対応する給与と、役員就任後の職務に対応する役員報酬を区分して支給するケースはあります。

期の途中から就任した役員の役員報酬に関するおすすめ記事:役員報酬は日割りできない!就任・退任時はどうする?

ただし、同じ期間について従業員給与と役員報酬を二重に支給すると、職務の対価としての合理性が問題になります。就任日、給与締め日、使用人兼務役員への該当性を確認し、給与台帳や議事録で区分しましょう。

Q.期の途中から就任した役員に賞与を支給できますか?

役員賞与を支給すること自体はできますが、会社の損金に算入するには、原則として事前確定届出給与などの要件を満たす必要があります。

新任役員については、就任日や職務執行開始日によって届出期限の判断が変わります。届出書に記載した金額や支給日と実際の支給内容が異なると、損金算入できない可能性があるため注意が必要です。

Q.役員報酬を決めた場合は税務署への届出が必要ですか?

毎月同額を支給する定期同額給与については、役員報酬を設定したこと自体を税務署へ届け出る制度は通常ありません。

期の途中で就任した際の役員報酬はここがポイント!

税理士_依頼_おすすめのポイント

ただし、株主総会議事録、取締役会議事録、給与台帳、総勘定元帳、銀行振込記録などを保存し、決議した役員報酬を実際に支給したことを説明できるようにします。事前確定届出給与として役員賞与を損金算入する場合は、期限内の届出が必要です。

Q.期の途中から就任した役員は社会保険に加入しますか?

法人に常時使用され、経営への継続的な参画や労務提供を行い、その対価として役員報酬を受ける役員は、原則として社会保険の加入対象になります。

新たに被保険者となる場合は資格取得届を提出します。すでに従業員として加入している人が役員へ昇格した場合は、役員報酬への変更によって月額変更届が必要になるかを確認しましょう。

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まとめ|期の途中から就任した役員報酬は就任形態と支給開始時期で判断する

期の途中から就任した役員の役員報酬は、事業年度の途中だから支給できないわけではありません。新たな役員が就任した時点で、役員報酬の月額、支給開始月、支給日を正式に決定し、就任後は毎月同額で支給することが基本です。

月の途中から役員に就任した場合、就任月から満額の役員報酬を支給する方法は、定期同額給与との整合性を保ちやすい方法です。一方、就任月だけ役員報酬を日割りにすると、翌月以降と支給額が異なり、損金算入が否認されるリスクがあります。

就任月を無報酬とし、翌月分から役員報酬を支給する方法については、就任時の決議内容や会社の給与締め日を確認しなければなりません。実際の振込日が翌月である「翌月払い」と、役員報酬自体を翌月分から発生させる処理は異なるため、混同しないことが重要です。

また、期の途中から就任した役員への初回の役員報酬設定と、既存役員の役員報酬を期中変更するケースは分けて考えます。既存役員の報酬を期首から3カ月経過後に変更する場合は、職制上の地位や職務内容の重大な変更など、臨時改定事由が必要になることがあります。

IDEMAE編集部

期の途中から就任した役員の役員報酬を決めた後は、株主総会議事録の作成、役員変更登記、社会保険の資格取得、月額変更届、給与計算、源泉徴収まで一貫して処理しなければなりません。

専門家へ相談する際は、顧問料の安さだけでなく、役員報酬の損金算入、社会保険、給与計算、経理、登記専門家との連携まで対応できるかを比較しましょう。税務・労務・経理を一つの窓口で管理できれば、期の途中から就任した役員の役員報酬に関する手続き漏れや、決議内容と給与計算の不一致を防ぎやすくなります。

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