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役員報酬を減額できる?期中変更の条件・手続き・注意点を解説

更新日:2026.06.30

会社の業績悪化や資金繰りの悪化により、「役員報酬を減額したい」「期中に役員報酬を下げても問題ないのか」と悩む経営者は少なくありません。特に中小企業では、売上の減少や利益率の低下、借入返済の負担増加などをきっかけに、まず代表者や取締役の役員報酬の減額を検討するケースがあります。

ただし、役員報酬の減額は、従業員給与のように自由に変更できるものではありません。役員報酬は法人税法上「役員給与」として扱われ、原則として毎月同じ金額を支給する「定期同額給与」に該当しなければ、会社の経費である損金として認められない可能性があります。国税庁も、役員給与のうち損金算入できるものとして、定期同額給与、事前確定届出給与、一定の業績連動給与などを挙げています。

つまり、役員報酬の減額で重要なのは「会社として減額できるか」だけではありません。「減額後の役員報酬を税務上も損金算入できるか」「期中変更として認められる理由があるか」「株主総会や取締役会の議事録を残しているか」まで確認する必要があります。

この記事では、役員報酬の減額が認められる条件、期中変更の判断基準、必要な手続き、税務・社会保険の注意点をわかりやすく解説します。

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役員報酬の減額はできる?まず押さえるべき基本

役員報酬の減額は、会社の意思決定としては可能です。会社が株主総会や取締役会などで適切に決議すれば、代表取締役や取締役の役員報酬を下げること自体はできます。

しかし、税務上は別の問題があります。役員報酬を減額した場合、その減額が法人税法上の要件を満たしていないと、減額前後の役員報酬の一部が損金不算入になる可能性があります。損金不算入とは、会社が実際に役員報酬を支払っていても、法人税の計算上は経費として認められないという意味です。

役員報酬の減額を検討するときは、次の2つを分けて考える必要があります。

観点 確認すべき内容
会社法・社内手続き 株主総会や取締役会で役員報酬の減額を決議しているか
税務上の扱い 定期同額給与などの要件を満たし、損金算入できるか

特に問題になりやすいのが、事業年度の途中で役員報酬を減額する「期中変更」です。役員報酬は、会社の利益調整に使われやすい性質があります。たとえば、利益が出そうだから役員報酬を増やす、赤字になりそうだから役員報酬を減らす、といった変更を自由に認めると、法人税の計算が恣意的になってしまいます。

IDEMAE編集部

そのため、役員報酬の減額は「いつでも自由にできる」のではなく、原則として事業年度開始から一定期間内の定時改定、またはやむを得ない事情がある場合に限って認められると考える必要があります。

役員報酬の減額を検討している方は、まず「なぜ役員報酬を減額するのか」「その理由を客観的に説明できるか」「減額後も毎月同額で支給できるか」を確認しましょう。

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役員報酬を減額できる主な3つのケース

役員報酬の減額が税務上問題になりにくいケースは、大きく3つに分けられます。1つ目は事業年度開始から3ヶ月以内に行う定時改定、2つ目は経営状況が著しく悪化した場合の業績悪化改定事由、3つ目は役員の地位や職務内容に重大な変更があった場合の臨時改定事由です。

役員報酬の減額を考える際は、自社の状況がこのどれに該当するのかを確認することが重要です。

期首から3ヶ月以内に役員報酬を減額するケース

役員報酬の減額で最も判断しやすいのは、事業年度開始の日から3ヶ月以内に行う改定です。一般的には、決算後に業績を確認し、定時株主総会などで新しい事業年度の役員報酬を決めるケースが該当します。

たとえば、3月決算の会社であれば、4月から新しい事業年度が始まります。この場合、事業年度開始から3ヶ月以内に株主総会や取締役会で役員報酬の減額を決議し、その後は毎月同じ金額で支給すれば、定期同額給与として扱いやすくなります。

このケースでは、「業績が著しく悪化しているか」までは必ずしも問題になりません。前期の決算結果、今期の資金繰り計画、利益予測、役員個人の手取り、社会保険料などを踏まえて、今期の役員報酬を見直すことができます。

役員報酬を減額する際に気をつけておきたい注意点

税理士_依頼_おすすめの注意点

ただし、期首から3ヶ月以内であっても、減額後の役員報酬を月ごとに変動させると、定期同額給与の要件から外れる可能性があります。役員報酬を減額する場合は、「何月支給分から」「月額いくらにするのか」を明確にし、減額後は毎月同額で支給することが重要です。

業績悪化により期中に役員報酬を減額するケース

事業年度の途中で役員報酬を減額したい場合に、最も重要になるのが「業績悪化改定事由」です。これは、会社の経営状況が著しく悪化したことなどにより、役員報酬を減額せざるを得ない場合に認められる考え方です。

ただし、業績悪化改定事由は、単に「売上が少し下がった」「利益目標に届かなかった」「一時的に資金繰りが苦しい」というだけでは認められにくい点に注意が必要です。

IDEMAE編集部

国税庁の資料でも、客観的な状況がない単なる将来の見込みによる役員給与の減額は、業績悪化改定事由による減額改定には当たらないとされています。

役員報酬の減額が業績悪化改定事由として認められるかどうかは、「会社の経営状況が著しく悪化しているか」「役員報酬を減額しなければならない合理的な事情があるか」で判断されます。

たとえば、以下のような事情がある場合は、役員報酬の減額を検討する合理性が高くなります。

  • 売上や粗利が急激に落ち込んでいる
  • 営業赤字が継続し、資金繰りが著しく悪化している
  • 金融機関から返済条件の見直しや経営改善計画の提出を求められている
  • 取引先や株主への信用維持のため、役員報酬の減額が必要になっている
  • 従業員賞与や人件費の削減も含めた経営改善策を実施している

ここで重要なのは、役員報酬の減額理由を「気持ち」ではなく「客観的な資料」で説明できるようにしておくことです。試算表、資金繰り表、経営改善計画、金融機関との協議資料、取締役会議事録などを整えておくと、後から税務上の説明をしやすくなります。

IDEMAE編集部

役員報酬を減額する方法や注意点について、さらに詳しく知りたい方はこちらの記事をご参照ください。

おすすめ記事:赤字を理由に役員報酬を減額することは可能?変更のタイミングや手順を解説

役員報酬の減額は、単なる節税策として行うものではありません。会社の存続、資金繰りの改善、金融機関や取引先への信用維持のためにやむを得ず行うものだと説明できることが大切です。

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役員の地位や職務内容の変更により減額するケース

役員報酬の減額は、業績悪化だけでなく、役員の地位や職務内容に重大な変更があった場合にも認められることがあります。これを「臨時改定事由」といいます。

国税庁の案内でも、臨時改定事由は、役員の職制上の地位の変更、職務内容の重大な変更、その他これらに類するやむを得ない事情とされています。

たとえば、代表取締役が退任して非常勤取締役になった場合、病気療養により経営への関与が大きく減った場合、事業承継により後継者へ実務権限を移した場合などは、役員報酬の減額を検討する余地があります。

役員報酬を減額する際に気をつけておきたい注意点

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一方で、形式的に役職名を変えただけで、実際の職務内容や責任がほとんど変わっていない場合は注意が必要です。税務上は、肩書きだけでなく、実際にどのような職務を担当しているか、経営判断への関与がどの程度あるか、報酬額と職務内容が見合っているかが見られます。

役員の地位や職務内容を理由に役員報酬を減額する場合は、議事録に「なぜ役員報酬を減額するのか」を具体的に残すことが重要です。「代表取締役から取締役へ変更」「常勤から非常勤へ変更」「担当業務の縮小」「病気療養に伴う職務軽減」など、減額理由と職務内容の変化を結びつけて記録しておきましょう。

役員報酬を減額する手続きと議事録の残し方

役員報酬の減額では、税務上の条件だけでなく、社内手続きも重要です。どれだけ合理的な減額理由があっても、株主総会や取締役会の決議がなく、議事録も残っていない場合は、税務調査で説明が難しくなります。

特に中小企業では、代表者が自分の判断だけで役員報酬を減額してしまうケースがあります。しかし、役員報酬は会社と役員との間の重要な報酬決定事項です。会社のルールに沿って決議し、証拠を残しておく必要があります。

株主総会または取締役会で減額を決議する

役員報酬の減額を行う場合、まず確認すべきなのは、定款や過去の株主総会決議で役員報酬がどのように決められているかです。

一般的には、株主総会で役員報酬の総額の上限を決め、その範囲内で個別の役員報酬を取締役会や代表取締役に委任しているケースがあります。この場合、個別の役員報酬の減額は取締役会決議で対応できる場合があります。

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役員報酬を減額する方法や注意点について、さらに詳しく知りたい方はこちらの記事をご参照ください。

おすすめ記事:役員報酬の減額は自由にできない?定期同額のルールと減額できる3つのケースを解説

一方、株主総会で個別の役員報酬額まで具体的に決めている場合は、役員報酬を減額する際にも株主総会決議が必要になることがあります。

中小企業では株主と役員が同じ人物であることも多く、「自分の会社だから議事録は不要」と考えがちです。しかし、税務調査では、役員報酬の金額をいつ、誰が、どのような理由で決めたのかを確認される可能性があります。役員報酬の減額を行う場合は、実態に合った決議を行い、必ず議事録を残しましょう。

議事録には減額理由・金額・開始時期を明記する

役員報酬の減額に関する議事録では、単に「役員報酬を減額する」と書くだけでは不十分です。

IDEMAE編集部

後から見ても、なぜその時期に役員報酬を減額したのか、どの役員の報酬をいくらからいくらに減額したのかが分かるように記載する必要があります。

議事録に入れておきたい主な内容は、次のとおりです。

  • 減額対象となる役員名
  • 減額前の役員報酬の月額
  • 減額後の役員報酬の月額
  • 減額を開始する支給月
  • 役員報酬を減額する理由
  • 業績悪化や職務変更を示す具体的な事情
  • 決議日、出席者、決議内容

たとえば、業績悪化による役員報酬の減額であれば、「売上高が前年同月比で大幅に減少している」「営業赤字が継続している」「金融機関へ経営改善計画を提出する必要がある」「役員報酬の減額により固定費を削減し、資金繰りを改善する」といった理由を具体的に記載します。

役員報酬を減額する際はここがポイント!

税理士_依頼_おすすめのポイント

議事録だけでなく、試算表、資金繰り表、経営改善計画、金融機関とのやり取りなども一緒に保存しておくと、役員報酬の減額がやむを得ない判断だったことを説明しやすくなります。

役員報酬の未払いと減額を混同しない

役員報酬の減額でよくある失敗が、「減額」と「未払い」を混同することです。

役員報酬の減額は、将来の支給額を正式な手続きによって下げることです。一方、未払いは、本来支払うべき役員報酬を資金繰りの都合などで支払っていない状態です。

たとえば、月額80万円の役員報酬を決議しているにもかかわらず、資金繰りが苦しいため実際には50万円しか支払っていない場合、これは正式な役員報酬の減額ではなく、未払役員報酬として整理すべき問題になる可能性があります。

IDEMAE編集部

未払いのままにしておくと、会計処理、源泉所得税、社会保険料、役員個人の所得税などに影響します。また、実際には支払っていないのに役員報酬を支払ったように処理していると、税務上の問題が生じる可能性もあります。

役員報酬の減額を行うなら、支給額を正式に変更するのか、一時的に未払いにするのかを明確に分ける必要があります。資金繰りが苦しい場合でも、曖昧な処理をせず、税理士と相談しながら会計処理と税務処理を整理することが大切です。

役員報酬を期中に減額するときの税務上の注意点

役員報酬の減額で最も注意すべきなのは、損金不算入のリスクです。役員報酬は金額が大きくなりやすいため、税務上否認されると法人税の負担に大きな影響が出ます。

役員報酬の減額は、会社の資金繰りを改善するために行うことが多いですが、税務上の処理を誤ると、かえって法人税負担が増える可能性があります。

損金不算入になりやすい役員報酬の減額

役員報酬の減額が損金不算入になりやすいのは、減額の理由が不明確な場合や、利益調整と見られやすい場合です。

たとえば、決算前に利益が少なくなりそうだから役員報酬を下げる、資金繰りが一時的に厳しいから一部だけ支給額を下げる、議事録を作らず口頭で役員報酬を変更する、といったケースは注意が必要です。

特に、業績悪化改定事由を理由に役員報酬を減額する場合は、「経営状況が著しく悪化している」といえるだけの客観的な事情が必要です。単なる売上目標未達、予算未達、軽微な利益減少だけでは、役員報酬を期中に減額する理由として弱い可能性があります。

税務調査で見られやすいのは、次のような点です。

  • 役員報酬の減額を決めた時期
  • 減額前後の支給額が毎月同額になっているか
  • 減額理由を説明できる資料があるか
  • 業績悪化や職務変更と減額額の関係が自然か
  • 議事録の日付と実際の支給実態が一致しているか
  • 役員報酬の減額が利益調整目的に見えないか

役員報酬の減額は、単に「役員が我慢するために下げた」と説明するだけでは不十分です。

IDEMAE編集部

会社の経営状況、資金繰り、金融機関対応、今後の改善計画と結びつけて説明できるようにしておく必要があります。

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事前確定届出給与や役員賞与がある場合は別途注意する

役員報酬の減額を検討する際、月額報酬だけでなく、役員賞与や事前確定届出給与がある場合は特に注意が必要です。

事前確定届出給与とは、事前に支給時期や支給額を税務署へ届け出ることで、一定の要件を満たせば損金算入が認められる役員給与です。しかし、届け出た金額と実際の支給額が異なると、損金算入が認められない可能性があります。

役員報酬を減額する際はここがポイント!

税理士_依頼_おすすめのポイント

国税庁は、事前確定届出給与の内容を変更する場合、臨時改定事由や業績悪化改定事由に応じて変更届出の期限を定めています。業績悪化改定事由による変更の場合は、株主総会等の決議日から1ヶ月を経過する日など、一定の期限内に変更届出を行う必要があります。

そのため、役員報酬の減額とあわせて役員賞与を減額・不支給にしたい場合は、月額報酬とは別に確認が必要です。「月額の役員報酬を減額したから、役員賞与も自由に減額できる」と考えるのは危険です。

役員賞与や事前確定届出給与が絡む場合は、税務上の判断が複雑になりやすいため、事前に税理士へ相談した方が安全です。

役員報酬を0円に減額する場合の注意点

資金繰りが極端に悪化した場合、「役員報酬を0円に減額したい」と考える経営者もいます。役員報酬を0円にすること自体は、会社の状況によって検討できる場合があります。

ただし、役員報酬を0円にする場合は、より慎重な判断が必要です。代表取締役として実際に経営に関与しているにもかかわらず、役員報酬を0円にする場合、職務実態との整合性を問われる可能性があります。

また、役員報酬を0円にすると、役員個人の生活費、社会保険の資格や保険料、会社から役員への貸付・立替、役員借入金などにも影響することがあります。会社の資金繰りを守るために役員報酬の減額を行うことはありますが、0円にする場合は、税務だけでなく労務・社会保険・個人の資金面まで確認することが重要です。

IDEMAE編集部

役員報酬を0円にするかどうかは、「税金を減らしたいから」という理由ではなく、「会社の経営状況から見てやむを得ないか」「職務内容と報酬額の関係を説明できるか」「今後の事業計画と整合しているか」で判断しましょう。

役員報酬の減額が社会保険・税金・手取りに与える影響

役員報酬を減額すると、法人税だけでなく、社会保険料、源泉所得税、住民税、役員個人の手取りにも影響します。役員報酬の減額を会社側の資金繰りだけで判断すると、後から個人側の生活費や社会保険の手続きで困る可能性があります。

役員報酬の減額は、会社と役員個人の両方に影響するため、法人側の損益だけでなく、個人側の負担もあわせてシミュレーションすることが大切です。

社会保険料は月額変更届の対象になる場合がある

役員報酬を減額した場合、社会保険料がすぐに下がるとは限りません。社会保険では、固定的賃金の変動があり、変動後3ヶ月間の報酬平均による標準報酬月額と従前の標準報酬月額との間に原則2等級以上の差が生じる場合、随時改定の対象になります。日本年金機構も、随時改定は固定的賃金の変動月以後3ヶ月の平均額をもとに判断すると説明しています。

IDEMAE編集部

役員報酬を減額する方法や注意点について、さらに詳しく知りたい方はこちらの記事をご参照ください。

おすすめ記事:役員報酬はいつ変更できる?「3か月ルール」と減額が認められるケースを解説

役員報酬の減額は固定的賃金の変動に当たるため、条件を満たす場合は「健康保険・厚生年金保険 被保険者報酬月額変更届」の提出が必要になります。日本年金機構の案内でも、月額変更届は報酬額に大幅な変動があり、随時改定に該当するときに提出する届出とされています。

ただし、社会保険料は役員報酬を減額した月からすぐに変わるわけではありません。一般的には、減額後の報酬を3ヶ月分確認し、その結果に基づいて4ヶ月目から標準報酬月額が改定されます。そのため、会社の資金繰り改善を目的に役員報酬を減額しても、社会保険料の負担が下がるまでにタイムラグが生じます。

役員報酬の減額を実行する前に、税務上の損金算入だけでなく、社会保険料がいつから変わるのかも確認しておきましょう。

源泉所得税・住民税・手取りへの影響も確認する

役員報酬を減額すると、毎月の源泉所得税は減額後の報酬額に応じて下がる可能性があります。社会保険料も随時改定に該当すれば、一定期間後に下がることがあります。

IDEMAE編集部

一方で、住民税は前年の所得をもとに計算されるため、役員報酬を減額してもすぐには下がりません。そのため、役員報酬を減額した直後は、手取りが大きく減る一方で、住民税の負担はしばらく残ることがあります。

代表者や役員の生活費を役員報酬に依存している場合、役員報酬の減額幅を大きくしすぎると、個人の資金繰りが厳しくなる可能性があります。会社の資金繰りを守るために役員報酬を減額することは重要ですが、役員個人の生活費、住宅ローン、教育費、住民税、社会保険料なども含めて検討する必要があります。

役員報酬の減額を決める際は、「会社の利益がいくら改善するか」だけでなく、「役員個人の手取りがいくら残るか」まで確認しましょう。

減額後の役員報酬は低ければよいわけではない

役員報酬の減額を考えるとき、「とにかく低くすれば会社の負担が減る」と考えがちです。しかし、役員報酬は低ければよいというものではありません。

役員報酬を減額する際に気をつけておきたい注意点

税理士_依頼_おすすめの注意点

役員報酬を下げすぎると、役員個人の生活費が不足するだけでなく、会社から役員への貸付や立替が増えることがあります。また、役員報酬を大きく減額したあとに再び増額したくなった場合、次の事業年度まで待つ必要が出ることもあります。

役員報酬の減額額を決める際は、次の観点を総合的に見て判断することが重要です。

  • 会社の月次利益と資金繰り
  • 借入返済や金融機関への説明
  • 役員個人の生活費と手取り
  • 社会保険料の負担
  • 今後の売上回復見込み
  • 従業員給与や賞与とのバランス
  • 同業・同規模企業と比べた報酬水準

IDEMAE編集部

役員報酬の減額は、単なる節税ではなく、会社と役員個人の資金計画の見直しです。減額後に資金繰りが改善しても、役員個人の生活が成り立たなければ、結果的に会社からの借入や不明瞭な資金移動が発生する可能性があります。

役員報酬の減額で失敗しないための判断ポイント

役員報酬の減額は、業績が悪くなったときの有効な対応策の1つです。しかし、手続きを誤ると、損金不算入、社会保険手続きの漏れ、議事録不備、役員個人の資金不足などにつながります。

IDEMAE編集部

役員報酬の減額を行う前に、以下の流れで確認すると判断しやすくなります。

まず、今回の役員報酬の減額が事業年度開始から3ヶ月以内の定時改定なのか、期中変更なのかを確認します。期首から3ヶ月以内であれば、定時改定として処理しやすくなります。

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次に、期中変更である場合は、業績悪化改定事由または臨時改定事由に該当するかを確認します。業績悪化を理由にするなら、試算表や資金繰り表などの客観資料を用意し、単なる売上減少や一時的な資金不足ではなく、役員報酬の減額が必要な事情を説明できるようにします。

そのうえで、株主総会や取締役会で役員報酬の減額を決議し、議事録を作成します。議事録には、減額理由、減額前後の金額、開始時期、対象役員を具体的に記載します。

最後に、減額後の役員報酬について、法人税、源泉所得税、住民税、社会保険料、役員個人の手取りを確認します。特に社会保険の月額変更届が必要になるかどうかは、税務とは別に確認が必要です。

役員報酬の減額で失敗しやすいのは、「とりあえず今月から下げる」「あとで議事録を作る」「税金だけを見て判断する」という進め方です。役員報酬の減額は、事前の判断と資料整備が非常に重要です。

税理士に相談した方がよいケース

役員報酬の減額は、自社だけで判断できる場合もあります。しかし、次のようなケースでは、税理士に相談した方が安全です。

  • 事業年度の途中で役員報酬を減額したい
  • 業績悪化改定事由に該当するか判断できない
  • 金融機関に経営改善計画を提出する予定がある
  • 役員賞与や事前確定届出給与も見直したい
  • 複数の役員の報酬を同時に減額したい
  • 役員報酬を0円に近い金額まで下げたい
  • 社会保険料や手取りへの影響も確認したい
  • 税務調査で否認されないか不安がある

役員報酬を減額する際はここがポイント!

税理士_依頼_おすすめのポイント

役員報酬の減額は、法人税だけで完結する話ではありません。社会保険、役員個人の所得税・住民税、会社の資金繰り、金融機関対応まで関係します。そのため、税務・労務・資金繰りをまとめて確認できる体制で進めることが重要です。

特に「役員報酬の減額をすれば資金繰りが楽になる」と考えている場合でも、社会保険料の反映時期や住民税の負担を見落とすと、期待したほど資金繰りが改善しないことがあります。減額前にシミュレーションを行い、会社と役員個人の両方にとって無理のない金額を決めましょう。

役員報酬の減額に関するQ&A

最後に、役員報酬の減額を検討している人が抱いている質問を一覧にしました。役員報酬の減額を検討されている方はぜひ参考にしてみてください。

Q. 役員報酬は減額できますか?

役員報酬の減額自体は可能です。ただし、税務上は、減額後の役員報酬が定期同額給与として損金算入できるかが重要です。

IDEMAE編集部

期首から3ヶ月以内の定時改定であれば減額しやすい一方、事業年度の途中で役員報酬を減額する場合は、業績悪化改定事由や臨時改定事由に該当するかを確認する必要があります。

Q. 役員報酬を途中から下げることはできますか?

役員報酬を途中から下げることはできますが、税務上のリスクがあります。期中に役員報酬を減額する場合は、経営状況が著しく悪化した場合や、役員の地位・職務内容に重大な変更があった場合など、やむを得ない理由が必要です。単なる利益調整や一時的な資金繰り悪化だけでは、損金算入が認められない可能性があります。

Q. 業績が悪化していれば役員報酬の減額は認められますか?

業績が悪化しているだけで、必ず役員報酬の減額が税務上認められるわけではありません。重要なのは、経営状況が著しく悪化しており、役員報酬を減額せざるを得ない事情があるかどうかです。売上や利益の急減、資金繰り表、金融機関との協議資料、経営改善計画など、客観的な資料を残しておくことが大切です。

役員報酬を減額する方法や注意点に関するおすすめ記事:役員報酬は変更できる?手続き方法と注意点を解説!

Q. 役員報酬を減額すると社会保険料はすぐ下がりますか?

役員報酬を減額しても、社会保険料がすぐに下がるとは限りません。固定的賃金の変動があり、変動後3ヶ月間の報酬平均と従前の標準報酬月額に原則2等級以上の差が出る場合、随時改定の対象になります。条件を満たす場合は月額変更届を提出し、通常は4ヶ月目から標準報酬月額が改定されます。

Q. 役員報酬の減額には議事録が必要ですか?

役員報酬の減額を行う場合は、株主総会や取締役会の議事録を残すことが重要です。議事録には、減額対象の役員、減額前後の金額、減額開始時期、減額理由を具体的に記載します。

特に期中に役員報酬を減額する場合は、業績悪化や職務変更の根拠資料と議事録の内容が一致していることが大切です。

Q. 役員報酬を0円に減額できますか?

役員報酬を0円にすること自体は、会社の状況によって検討できる場合があります。ただし、代表者や役員として実際に職務を行っている場合、職務内容と報酬額の整合性が問われる可能性があります。また、役員個人の生活費、社会保険、会社との資金貸借にも影響するため、慎重に判断する必要があります。

Q. 役員報酬の減額は税理士に相談すべきですか?

期首から3ヶ月以内の通常の改定であれば、自社で整理できる場合もあります。

IDEMAE編集部

しかし、期中に役員報酬を減額する場合、業績悪化改定事由に該当するか不明な場合、事前確定届出給与や役員賞与も見直す場合は、税理士に相談した方が安全です。

役員報酬の減額は、法人税・社会保険・役員個人の手取りに影響するため、事前にシミュレーションしておくことが重要です。

まとめ

役員報酬の減額は、会社の業績悪化や資金繰り改善のために有効な選択肢になることがあります。しかし、役員報酬の減額は自由に行えるものではなく、税務上は定期同額給与として損金算入できるかが大きなポイントになります。

役員報酬を減額しやすいのは、事業年度開始から3ヶ月以内の定時改定です。一方、事業年度の途中で役員報酬を減額する場合は、業績悪化改定事由や臨時改定事由に該当するかを慎重に判断する必要があります。単なる売上減少、一時的な資金繰り悪化、利益調整目的の減額では、税務上認められない可能性があります。

また、役員報酬の減額では、株主総会や取締役会の決議、議事録の作成、減額理由を示す資料の保存も重要です。さらに、役員報酬を減額すると社会保険料、源泉所得税、住民税、役員個人の手取りにも影響します。

役員報酬の減額を検討する際は、「下げられるか」だけでなく、「損金算入できるか」「税務調査で説明できるか」「社会保険や手取りにどのような影響があるか」まで確認しましょう。期中変更や業績悪化を理由に役員報酬を減額する場合は、事前に税理士へ相談し、必要な手続きと資料を整えたうえで進めることが大切です。

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