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役員報酬とは?給与との違いや種類について解説
公開日:2023.11.27
更新日:2024.08.02
役員報酬とは、会社における役員に支払う給与等の報酬を指しますが、通常の従業員へ支払う給与とは何が違うのでしょうか?
この記事では、役員報酬の概要や損金算入について、また役員報酬の相場や決め方についても解説していきます。役員の種類や役員と社員の違いについても触れていきますので、これから会社設立や役員入社などを検討している方は、ぜひ本記事を参考にしてください。
役員報酬の概要をはじめ、役員報酬と給与との違いについては、以下の記事でも分かりやすく解説しています。
これから役員報酬を決めていく経営者の方や、役員報酬と給与の違いについてあまり理解できていない方は、ぜひ参考にしてみてください。
役員報酬と給与に関する参考記事;
役員報酬と給与は両方もらえる?役員報酬を給与の違いや、役員報酬の決め方も解説します
役員とは?役員と社員の違い
役員報酬について解説する前に、まずは「役員」とはどのような役職なのかを解説していきます。役員とは、会社における「取締役」「会計参与」「監査役」といった役職を指します。後ほど詳しく解説していきますが、役員の範囲については「会社法」と「法人税法」それぞれによって定義されている役員の範囲は異なります。
役員と社員では、会社との雇用形態が大きく異なります。通常の社員の場合は、会社と「雇用契約」を結び、労働基準法が適用されます。一方で役員の場合は、会社と「委任契約」を結ぶため、会社との雇用契約はなく労働基準法は適用されません。(参考:「役員の勤怠管理は原則不要。役員と従業員の違いについて」)
また、役員には任期があり、2年ごと(監査役の場合は4年ごと)に更新や役員の変更などを行う必要があります。
※「非公開会社」の場合には、取締役の任期を最長10年とすることも可能です。
役員報酬とは?給与の違い
名前の通りではありますが、役員報酬とは上記の取締役や監査役といった役員に対して支払われる報酬のことです。労働日数や勤務時間によって変動することはなく、毎月一定額の役員報酬が支払われます。
給与は、会社と雇用契約を結んでいる従業員に対して、労働の対価として支払われています。従業員へ支払う給与は全額を損金として計上できますが、役員報酬を損金として計上するためには、節税につながる不正を防ぐために「会社法」や「法人税法」などで様々なルールが定められています。役員報酬を損金算入する際の具体的なルールについては、後ほど詳しく解説していきます。
損金については、こちらの記事(損金とは?費用や経費との違いについて)で解説されているのであわせてご覧ください。
税制上有利にするための役員報酬の決め方については、以下の記事もあわせて参考にしてください。
参考記事:「役員報酬とは・役員報酬の決め方や注意点について解説します」
主な役員の種類と役割
冒頭でも少し触れましたが、役員にはいくつかの役職があり、「会社法」と「法人税法」それぞれで定義している役員の範囲が異なります。
法人税法上の役員は、法人の所得計算にあたっての実効性を確保するという目的から、会社法上の役員よりも広い範囲の役員を含みます。
会社法上の役員とは、株主総会で選任された「取締役」「監査役」「会計参与」を指します。一方で、法人税法上では上記の役員に加えて、「執行役」や「監事」、その他にも「法人の経営に従事しているもの」などが含まれます。
役員の範囲については、以下の記事もあわせてご覧ください。
参考記事:「取締役と執行役員の違いとは?法律上で違う役員の扱いについて」
役員の種類①:法定役員
会社法(会社法施行規則)といった法で定められている役員は「法定役員」と呼ばれており、以下の役職が対象です。
- 取締役
- 執行役
- 会計参与
- 監査役
- 理事
- 監事および清算人
法定役員については、こちらの記事(どのような人が役員に該当するのか?)もあわせてご覧ください。
役員の種類②:みなし役員
一方で、法人税法上(税務上)に当てはまる役員は「みなし役員」と呼ばれ、会社法上では役員ではなくても、税務上は役員と同様の扱いとなります。
国税庁が定義しているみなし役員の範囲としては、以下の場合に当てはまります。
- 法人の使用人(職制上使用人としての地位のみを有する者に限ります。)以外の者で、その法人の経営に従事しているもの
- 同族会社の使用人(職制上使用人としての地位のみを有する者に限ります。)のうち、次に掲げるすべての要件を満たす者で、その会社の経営に従事しているもの
詳細については、こちらのページ(法人税法上における役員の範囲|国税庁)で記載されているので、あわせてご覧ください。
また、みなし役員についてはこちらの記事(みなし役員とは?税法上の役員の取り扱いについて)も参考になるかと思います。
税務上損金算入として認められる役員報酬の支払い種類
次に、役員報酬を損金算入として認められる支払い種類について解説していきます。前述の通り、節税に繋がる不正を防ぐために、役員報酬を支払う際には様々な条件をクリアしないと役員報酬は損金として扱うことができません。
役員報酬を損金として扱うためには、役員報酬の支払い方法として以下の3種類があります。
- 定期同額給与
- 事前確定届出給与
- 業績連動給与
それぞれの役員報酬の支払い種類について、詳しく解説していきます。
また、以下の記事では役員報酬を経費(損金)にするための方法について分かりやすく解説しています。役員報酬を決める際には、なるべく経費(損金)として扱えるようにすることで、会社としての節税に繋がります。
これから役員報酬を決めようと思っている方や、役員報酬を経費として扱うために必要なことを知っておきたい方は、ぜひ参考にしてください。
参考記事:役員報酬を経費にする方法とは?役員報酬を経費にするための要件についてもあわせて解説
上記の記事では、役員報酬を経費にする方法だけでなく、役員報酬を決める際の注意点や役員報酬を決める手順についても解説していますので、役員報酬のルールについてよく分かっていない方は、ぜひ参考にしてください。
役員報酬の種類①:定期同額給与
定期同額給与とは、毎月(定期的)に同じ金額を支払うことです。定期的に同額を支払うことで節税における不正などを防ぐことができるため、役員報酬を毎月同額で支給している場合には役員報酬を損金として扱うことが可能です。
原則、年に1度だけ期首に役員報酬を定めることになりますが、期首から3ヶ月以内であれば役員報酬の額を変更することができるので覚えておきましょう。この場合は、税務署への届出などは必要ありません。
役員報酬の種類②:事前確定届出給与
事前確定届出給与とは、事前に支給する額や支給日等を決めておき、その通りに役員報酬の支給を行えば、役員報酬を損金として扱える方法です。
この事前確定届出給与として役員報酬を支払う際には、株主総会での決議や議事録の作成、届出を行うための書類を税務署へ提出する必要があります。
事前確定届出給与を行なう際に提出する書類は、以下のページからダウンロードが可能です。
書類の書き方や提出期限などについては、こちらの記事(事前確定届出給与とは?提出期限や記載方法について解説)で解説されているので参考にしてみてください。
役員報酬の種類③:業績連動給与
業績連動給与とは、会社の業績に応じて役員報酬の金額が変わります。業績連動給与として損金算入する場合には、次の条件を満たす必要があります。
- 利益や株式の市場価格、売上高といった客観的な指標で算定されている
- 上記の数値が確定した日の翌日から1ヶ月以内に支払われる
また、業績連動給与は同族会社の場合は適用することはできません。同族会社とは、会社の株主の3人以下、または株主と特殊な関係にある個人や法人が議決権の過半数を所有している会社を指します。
こちらの記事(役員報酬の業績連動給与のメリットについて)でも記載されていますが、業績連動給与にすることで役員のモチベーションアップに繋がるというメリットがある一方で、役員報酬の計算式の開示を行う必要があるといったデメリットもあります。
役員報酬の平均相場
どのような条件であれば役員報酬を損金算入できるかを把握したところで、次に設定する役員報酬の相場についてご紹介していきます。
「令和4年分 民間給与の実態調査結果|国税庁」によると、会社規模/男女別の役員報酬の年間平均額は以下のとおりです。
資本金 | 男性 | 女性 |
---|---|---|
2,000万円未満 | 738万円 | 425万円 |
2,000万円以上 | 1,038万円 | 661万円 |
5,000万円以上 | 1,316万円 | 726万円 |
1億円以上 | 1,362万円 | 581万円 |
10億円以上 | 1,833万円 | 968万円 |
民間企業における役員報酬の平均額は上記のような数字ではありますが、上記の数字をそのまま自社に反映するのはなかなか難しいでしょう。
創立間もない会社やスタートアップ企業であれば、資本金が1,000万円以下ということも少なくありません。役員報酬を決める上で、役員の生活や会社としての資金のバランスを考えることが重要です。
役員報酬を高くして損金算入することで、会社としての税負担は減りますが役員個人の税負担は増加します。一方で、役員報酬を少なくし過ぎると、役員個人の生活が苦しくなってしまう可能性もあります。
役員個人としての生活や会社の資金、またそれぞれの税負担も考慮したうえで、役員報酬は決めていくと良いでしょう。原則として、役員報酬は1年間変更することはできないので、役員報酬は慎重に決めていきましょう。
役員報酬は確定申告が必要?
役員は従業員とは会社との契約が違い、役員報酬をもらっている場合は確定申告を行う必要があるのではと思っている方もいらっしゃると思います。
1つの会社のみで役員を行なっていて役員報酬を受け取っている場合には、基本的には確定申告は必要ありません。しかし、2つの会社の役員として役員報酬を受け取っている場合には、一般的な会社員と同様に確定申告を行う必要があります。
また、1つの会社から役員報酬を受け取っている場合でも、以下の条件のいずれかに当てはまる場合には、確定申告を行う必要があります。
- 役員報酬の年間の収入額が2,000万円を超える場合
- 役員報酬以外に20万円以上の所得を得ている場合
- 同族会社の役員で、役員報酬以外に会社から貸付金の利子や賃貸料などを受け取っている場合
- 源泉徴収義務のないものから給与などをもらっている場合
- 源泉徴収の猶予を受けている場合
- 退職所得の税額が源泉徴収された金額よりも多くなる場合
役員報酬の確定申告については、こちらの記事(役員報酬の確定申告について)でも解説されているのであわせて参考にしてください。
役員報酬の決め方
次に役員報酬の決め方について解説をしていきます。役員報酬はなんとなく決めて、毎月振り込むだけでは決め方としては不十分です。
役員報酬を決める際には、定款や株主総会の決議によって定める必要があります。
定款で定めている中小企業は多くないため、一般的には株主総会の決議によって役員報酬を決定します。
役員報酬を決める際には
- 株主総会において各役員の報酬額を個別に決める
- 株主総会において役員全体の報酬総額を決めて、役員ごとの報酬額は取締役会で決める
といった2つの方法があります。
どちらの方法で役員報酬を決めても大丈夫なので、自社が決めやすい方法で役員報酬を決めていきましょう。
役員報酬の決め方や決める際のポイントについては、こちらの記事(役員報酬とは?種類や決め方のポイントを解説)でも解説されているのであわせてご覧ください。
また、役員報酬を株主総会の決議によって決める際には、「株主総会議事録」という書類を作成する必要があります。株主総会議事録の作成方法や書き方については、以下の記事でも分かりやすく解説しているので、あわせて参考にしてみてください。
役員報酬の決め方に関する参考記事:役員報酬を決める際に必要な「株主総会議事録」の作成方法や記載例を解説
役員報酬の変更ができる場合
役員報酬は期首から3ヶ月以内であれば自由に変更することができますが、原則として役員報酬は期の途中で変更することはできません。しかし、役員の変更や会社の業績の悪化などが発生した場合には、役員報酬を変更することも可能です。
役員の地位や職務内容を変更した場合
組織改編などにより、期中でも「取締役」から「代表取締役」に上がったりすることもあるでしょう。このような場合には、役員報酬の増額をすることが可能です。また、反対に役員の降格や職務内容の変更が合った場合に、役員報酬の減額を行うことが可能です。
経営状況が悪化した場合
会社の経営状況が悪化した場合にも、役員報酬の金額を変更することが可能です。こちらのページ(役員報酬の減額について|国税庁)にも書かれている通り、「経営状況の悪化に伴い、第三者である利害関係者との関係上、役員給与の額を減額せざるを得ない事情が生じた」場合には、役員報酬の減額を行うことが可能です。
まとめ
この記事では、役員報酬と給与の違いをはじめ、役員報酬の種類や決め方、相場について解説を行いました。これから会社設立を控えている方や、新たな役員就任が控えている方など、役員報酬について理解が深まっていれば幸いです。
役員報酬は原則変更することはできないので、会社と役員個人とのバランスを考えながら役員報酬の金額を決めていきましょう。
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