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個人事業主から法人化(会社設立)するために必要な手続きについて解説!

公開日:2024.02.13

更新日:2024.04.20

個人事業主として事業を営んでいる方の中には、売上の増加に伴って会社設立(法人化)を検討している方もいると思います。

 

通常の会社設立(法人化)を行う場合には、登記申請書や定款などを法務局に提出することで会社設立(法人化)を行うことが可能です。

一方で、個人事業主から会社設立(法人化)を行うためには、個人事業主の廃業手続きや資産や負債の移行手続きなどをあわせて行う必要があります。

 

この記事では、個人事業主から会社設立(法人化)する際に必要な手続きについて解説していきます。すでに個人事業主として事業を始めていて会社設立(法人化)を考えている方や、事業を始めようとしているが「法人」(会社設立する)か「個人事業主」のどちらで始めるかを悩んでいる方、個人事業主から会社設立(法人化)する時に必要な手続きや書類について知りたい方はぜひこの記事を参考にしていただければと思います。

 

参考記事

個人事業主から法人化するには?手続きと必要な準備・費用について解説

個人事業主から法人へ「法人成り(法人化)する際の手続きは?自分でもできる?」

個人事業の廃業手続きについて

個人事業主から法人化を行うと個人事業主ではなくなるため、個人事業主として廃業するための手続きを行う必要があります。

個人事業主の廃業手続きを行う際には、税務署都道府県税事務所市町村役場へ必要書類の提出を行う必要があります。

 

それぞれの役所に提出が必要な書類について、詳しく解説していきます。

個人事業主から法人化するときの税務署への手続き

個人事業の廃業手続きを行う際には、以下の書類を税務署へ提出します。

 
  • 個人事業の廃業届
  • 所得税の青色申告の取りやめ届
  • 給与支払事務所等の廃止届
  • 消費税の事業廃止届

個人事業主から法人化するときの必要書類①:個人事業の廃業届

個人事業の廃業届は、個人事業主として廃業することを税務署へ伝えるための書類です。

個人事業主として事業を始める際にも「開業届」という書類を提出したと思いますが、開業届と廃業届は同じ書類です。

 

個人事業主から法人化するときの必要書類である「個人事業の廃業届」はこちらのページ(個人事業の廃業届|国税庁)からダウンロードすることができるので、以下の記載例を参考に書類の作成を進めていきましょう。

 

個人事業の廃業届については、廃業をしてから1ヶ月以内に提出をする必要があります。

こちらの記事でも解説されている通り、個人事業主から法人化(会社設立)する場合であってもこちらの書類の提出は必要ですので、法人化(会社設立)する場合であっても手続きを忘れないようにしましょう。

個人事業主から法人化するときの必要書類②:所得税の青色申告の取りやめ届出書

所得税の青色申告の取りやめ届出書は、所得税の青色申告を行なっていた場合に提出が必要となります。

個人事業主から法人化するときの必要書類である「所得税の青色申告の取りやめ届出書」はこちらのページ(所得税の青色申告の取りやめ届出書|国税庁)からダウンロードを行うことが可能です。

 

所得税の青色申告の取りやめ届出書は、廃業した年の翌年3月15日までに提出すれば問題ありませんが、個人事業の廃業届とあわせて提出を行うのが一般的です。個人事業の廃業届と一緒に準備を進めていきましょう。

個人事業主から法人化するときの必要書類③:給与支払事務所等の廃止届

従業員を雇用していた(従業員に給与を支払っていた)場合には、給与支払事務所等の廃止届の提出が必要です。従業員を雇っておらず、一人で事業を行っていた場合には提出する必要はありません

 

個人事業主として従業員を雇用する場合の手続きについては、以下の記事もあわせてお読みください。

参考記事:「個人事業主が従業員を雇うには?メリットや必要手続きについて

 

個人事業主から法人化するときの手続きに必要な書類である「給与支払事務所等の廃止届」はこちらのページ(給与支払事務所等の廃止届|国税庁)からダウンロードを行うことができますので、以下の記載例を参考に書類の作成を進めましょう。

 

給与支払事務所等の廃止届は、廃業日から1ヶ月以内に提出する必要があります。

個人事業主から法人化するときの必要書類④:消費税の事業廃止届

課税事業者だった場合には、消費税の事業廃止届を提出する必要があります。こちらの記事(個人事業主の消費税の納税基準とは?課税事業者について解説)でも課税事業者について解説されていますが、期間内の売上高が1,000万円を超える場合には、消費税の納付手続きが必要となる「課税事業者」という扱いになります。

 

消費税の事業廃止届を提出することで、課税事業者としての事業を廃止することを税務署へ伝えます。消費税の事業廃止届は、こちらのページ(消費税の事業廃止届|国税庁)からダウンロードを行うことが可能です。以下の記載例を参考に、書類の作成を進めていきましょう。

こちらの書類は、廃業後速やかに提出しましょう。

個人事業主から法人化するときの都道府県税事務所や市町村役場への手続き

個人事業主から法人化する場合には、税務署への書類提出という手続きに加えて、都道府県税事務所や市町村役場への個人事業主の廃業手続きも必要となります。

個人事業主から法人化するときの必要書類⑤:事業廃止届

都道府県税事務所や市町村役場へは手続きとして「事業廃止届」を提出する必要がありますが、税務署への手続き時に提出する書類とは違い、地域によって提出すべき書類や提出先が異なります

 

事業廃止届を都道府県税事務所や市町村役場へ提出する際には、インターネットで「事業廃止届 東京都」のように、ご自身の管轄の地名とあわせて検索すれば、必要書類や提出先・手続きを確認することが可能です。こちら(個人事業を開業・廃止した時|東京都主税局)は東京都の事業廃止届についてのページです。参考までにご覧ください。

 

上記の書類を提出することで、個人事業主としての廃業手続きは完了します。従業員の有無や課税事業者かどうかによって、提出する書類や手続きは異なります。書類の作成を行う前に、必要な手続きや提出書類を把握しておきましょう。

 

なお、こちらの記事では法人化後に個人事業主を廃業しない場合のデメリットや手続きについて解説しています。法人化後も個人事業主を廃業しないことを考えている方は参考になるかと思いますのであわせてご確認ください。

法人化に向けて個人事業の資産や負債の移行手続きを行う

個人事業主から法人化を行う際には、個人事業の廃業手続きとあわせて、法人化に向けた資産や負債の移行手続きを行う必要があります。原則、個人事業主として所有していた資産や負債は、法人化するにあたり、すべて法人へと移行する必要があります。

法人化するにあたって個人事業の債務を引き受ける3つの方法

法人化するにあたり、個人事業の債務を引き受ける際には、以下の3つの方法があります。

  • 重畳的債務引受
  • 免責的債務引受
  • 新たに法人として融資を受ける
 

重畳的債務引受

重畳的債務引受とは、債務者(個人事業主)が債務を返済する状態のまま、法人としてその債務の返済を引き受けることです。個人として債務を免れるわけではないことに注意してください。

免責的債務引受

免責的債務引受とは、債務者(個人事業主)は債務を免れて、法人が新しい債務者として債務を負担することを言います。事業主個人が保証人になるのが一般的です。

新たに法人として融資を受ける

3つ目は、債務者(個人事業主)が個人事業として借り入れていた債務を返済して、新たに設立した法人が新しく融資を受けるという方法です。上記2つの方法では、債務を引き継ぐような形でしたが、法人が新たに融資を受けるため、担保なども新たに設定することになります。

 

法人化するにあたって債務を引き受ける場合の注意点についてはこちらの記事でも解説されています。

「法人化する際にどのような方法を取るべきか?」や「法人化するときの債務引受時のポイント」が気になる方は参考になるかと思います。

役員賞与認定課税に注意が必要

個人事業から法人化をするにあたって債務を引き継ぐ場合には、役員賞与認定課税について注意をしておく必要があります。

 

個人事業主から法人化するにあたり、資産より債務の方が多い場合(債務超過は、個人的に借り入れしたものを法人へ移し替えたとみなされる場合があります。債務者が法人化するにあたって個人から法人へと変わってしまうため、法人化したことで個人としては借り入れがなくなり、得をしたとみなされる可能性があります

その分を役員賞与としてもらったという形にされてしまいます。

この時に、役員賞与の認定課税が行われることで、結果的に所得税などの負担が発生する可能性があります。

 

基本的には個人事業主から法人化した時に債務よりも資産の方が多ければ、役員賞与認定課税の扱いは受けませんので、債務超過などでない場合は安心してください。

 

個人事業主から法人化した時の注意点である役員賞与認定課税については、以下の記事でも詳しく解説されています。併せてご覧ください。

参考記事:「法人成りをした場合の債務引受、役員賞与認定課税について

債務引受は金融機関との調整が必要

個人事業主から法人化を行う際に債務引受を行う場合には、金融機関との調整を行うことが重要です。個人事業としての融資に対して一括で返済ができない場合は、新会社が新たに融資を受けて個人に支払って、個人事業としての融資の返済を行うこともあります。

 

この場合には、新たに会社としての融資を行う際の調整などを金融機関と行う必要があります。

法人化をするにあたり、個人事業としての債務がないほうが手続きなどは楽ですが、もし債務がある場合には、上記の債務を引き受ける方法や注意点などを把握して、法人化を行いましょう。

 

個人事業主から法人化を行う際の債務引受については、こちらの記事(法人化する際に知っておきたい債務引受の方法と注意点

 

会社設立(法人化)の流れ

次に法人化するにあたって会社設立の流れについて理解を深めておきましょう。

 

会社設立(法人化)を行う際には、法務局への登記手続きを行う必要がありますが、登記申請に至るまでには以下の6つのステップで進めていきます。

 
  1.  会社の概要を決める
  2.  会社用の実印を作成する
  3.  定款を作成する
  4.  作成した定款について公証役場で認証を受ける
  5.  資本金の払い込みを行う
  6.  会社設立に必要な書類を用意して、法務局で登記申請する
 

それぞれのステップの詳細については、関連記事「会社設立の流れとは?株式会社を設立する際に必要な手続きと書類について」にて解説しているので、法人化するにあたって会社設立の手続きを詳しく知りたい方はあわせてご覧ください。

関連記事では、6つ目のステップである登記申請を行う際に、提出が必要な書類について解説を行なっていきます。

 

参考記事

会社設立の手続きはどうする?個人事業主が知りたい法人化の流れとメリットとは

会社設立(法人化)後に必要な手続き

会社設立(法人化)を行う際には登記申請を行うだけではなく、登記申請を行なった後にも多くのやるべきことがあります。

会社設立(法人化)のための登記申請を行なった後は、社会保険(健康保険・厚生年金保険)や労働保険(雇用保険・労災保険)に関する手続きを行わなければなりません

 

従業員の有無などの法人の状況によっても行うべき手続きは変わりますが、多くの法人は以下の役所へ手続きを行う必要があります。

 
  • 税務署
  • 都道府県税事務所
  • 市町村役場
  • 年金事務所
  • 労働基準監督署
  • ハローワーク
 

登記申請を終えた後に法人として行うべき手続きについては、以下の記事で解説しているので気になる方はあわせてご覧ください。

 

参考記事

会社設立後に必要な法人として手続きや流れについて

法人成り(法人化)の手続きと必要な書類、費用をわかりやすく紹介

会社設立(法人化)に必要な費用

個人事業主から法人化をする際の流れや手続きについては、把握できたと思います。最後に会社設立(法人化)の際に必要な費用について解説していきます。

 

会社設立(法人化)を行う際には、主に以下の費用がかかります。以下の表は、株式会社を設立した場合の一例です。

 
各書類の提出先一覧
項目 費用
定款の作成 4万円
※電子定款の場合は0円
定款の認証手数料 3万円
定款の謄本手数料 約2,000円
登録免許税 15万円
印鑑・印鑑証明書等 約1万円
資本金 1円〜

会社設立(法人化)の際に発生する費用については、以下の記事にてさらに詳しく解説しています。これから会社設立を検討している方は、ぜひ参考にしてください。

 

参考記事:「会社設立にかかる費用とは?株式会社と合同会社の費用の違いを解説

まとめ

この記事では、個人事業主が法人化をする際に必要な手続きや書類について解説を行いました。個人事業主から法人化を行う場合は、通常の会社設立とは異なり、個人事業の廃業や資産や債務の移行手続きを行う必要があります。

 

現在、個人事業主として事業を進めていて、法人化を検討している方は、この記事を参考に自分がどのようなことを行う必要があるのかを事前に把握して、法人化を進めていきましょう。

提出必要書類の一覧

  • 個人事業の廃業届
  • 所得税の青色申告の取りやめ届
  • 給与支払事務所等の廃止届
  • 消費税の事業廃止届

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