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役員が入社(就任)したらどうする?役員変更登記の手続きのやり方や書類の書き方解説

公開日:2023.09.22

更新日:2024.02.01

会社経営を行っていると、メンバーの追加、退職など、様々な手続きが発生します。
特に役員の就任や退任の手続きは従業員の入社手続きとは違って、あまり行うことのない手続きのため、どのように手続き進めればよいか分からないという方も多いと思います。
この記事では、株式会社を前提として新たに役員が入社(就任)した場合の役員変更登記手続きのやり方や、役員変更登記手続きに必要な書類について解説していきます。

そもそも役員とは?

まずは、役員とはどのような定義なのかをしっかりと理解しておきましょう。
役員とは、会社における「取締役」「会計参与」「監査役」という役職を指します。
通常の社員の場合は、会社と社員との間に雇用契約を結び労働基準法が適用されますが、役員の場合は「委任契約」を結ぶため、会社との雇用契約はありません。
また、役員には任期があり、2年ごと(監査役は4年)に更新や変更を行う必要があります。
(ただし非公開会社の場合には取締役の任期は最長10年とすることができます。)
では、それぞれの役員について解説をしていきます。

取締役

会社法第348条では、
(業務の執行)
第三百四十八条 取締役は、定款に別段の定めがある場合を除き、株式会社(取締役会設置会社を除く。以下この条において同じ。)の業務を執行する。
2 取締役が二人以上ある場合には、株式会社の業務は、定款に別段の定めがある場合を除き、取締役の過半数をもって決定する。
3 前項の場合には、取締役は、次に掲げる事項についての決定を各取締役に委任することができない。
一 支配人の選任及び解任
二 支店の設置、移転及び廃止
三 第二百九十八条第一項各号(第三百二十五条において準用する場合を含む。)に掲げる事項
四 取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の業務並びに当該株式会社及びその子会社から成る企業集団の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制の整備
五 第四百二十六条第一項の規定による定款の定めに基づく第四百二十三条第一項の責任の免除
4 大会社においては、取締役は、前項第四号に掲げる事項を決定しなければならない。
引用元:会社法第348条

という規定がされています。


言い換えると、取締役とは法人の業務を行う役割を担うことになります。
株式会社においては最低1名の取締役を置く必要があります。
※取締役会を設置する場合には、3名以上の取締役を置く必要があります。
また「代表取締役」は、会社法で定められた会社の最高責任者を指し、取締役の中から選任されます。
社長と兼任する場合もあれば、社長と代表取締役は別、複数の代表取締役が存在するなど、様々な状況が会社によって存在します。
細かい点ではありますが、代表取締役と社長の違いについて解説している記事もありますので、気になる方はご覧ください。

会計参与


会計参与とは、税理士や公認会計士といった「会計に関する専門家」が、取締役とともに計算関係書類の作成や管理を行い、株主や債権者といったステークホルダーに対して開示する職務を担っています。
会計参与の設置は義務づけられておらず任意であるため、必ず設置する必要はありません。

監査役

監査役とは、取締役や会計参与の職務が全うされているか、不正などが行われていないかなどを監査する役員です。
中小企業を想定した場合には取締役会を設置していない会社、もしくは取締役会を設置していて会計参与を設置している場合には、監査役の設置は任意となります。
監査役についてより詳細な情報を知りたい方は監査役の設置に関して詳細に解説しているサイトや、監査役の役割・義務を解説している記事も参考になるかと思います。

新たに役員が入社(就任)したら、役員変更登記の手続きが必要


役員が入社(就任)したことにより、新たに就任する場合には役員変更登記という手続きが必要です。
役員変更登記という手続きは名前の通り、役員の変更があった旨を法務局へ伝え、登記内容を変更することです。
役員の就任や変更が発生してから2週間以内に、この手続きを行う必要があります。

役員(取締役)就任の手続き、登記申請手続きに必要な書類

では、役員が入社(就任)した際に、どのような手続きや書類が必要なのかを解説していきます。
こちらの記事(役員が就任した場合の登記手続きで必要な提出書類について解説します)でも解説していますが、新たに役員が入社(就任)した場合には、以下の書類や手続きが必要です。
・株式会社変更登記申請書
・株主総会議事録
・株主リスト
・就任承諾書

それぞれの書類について詳しく解説していきます。

株式会社変更登記申請書


株式会社変更登記申請書は、登記の変更の手続きが生じた場合に必要となる手続きです。今回の手続きの場合は、役員の項目が変更となるためこの書類の提出が必要となります。

株式会社変更登記申請書では、
・会社法人番号
・商号
・本店住所
・登記の事由
・登記すべき事項
・登録免許税の金額
・添付書類のリスト
・申請人(代表取締役)の氏名、住所
・連絡先電話番号
の記載が必要となります。法人番号は、国税庁の法人番号公表サイトで調べることができるので、わからない場合はご活用ください。

株式会社変更登記申請書は、法務局の公式サイトからダウンロードが可能です。こちらのページ(株式会社変更登記申請書|法務局)からダウンロードを行いましょう。
書類のダウンロードを行ったあとは、以下の記載例を参考に書類の必要箇所の記入を進めていきましょう。役員変更(入社)時の登記手続きや書類の書き方について細かく解説しているサイトも参考になるかと思います。

<株式会社変更登記申請書の記載例>

株主総会議事録

株主総会議事録には、株主の総数や出席株主、決議した事項などを記載します。今回は、役員の就任について株主総会で可決した旨を決議した事項として記載した、株主総会議事録の提出を行います。
株主総会議事録の記載例は、以下を参考にしてください。

<株主総会議事録の記載例>

株主リスト

株主リストとは会社の株主の具体的な情報を記載した書類です。株主総会議事録に株主リストを添付して提出を行う必要があります。
株主リストの記入を行う際は、以下の記載例を参考にしましょう。

<株主リストの記載例>

就任承諾書

就任承諾書とは、新しく役員に就任した方が、役員に就任へ承諾したことを証明する書類です。会社から委任を受けて役員が就任するため、この就任承諾書という書類が必要となります。
就任承諾書の記入については、以下の記載例を参考にして進めていきましょう。

<就任承諾書の記載例>


・株主総会議事録
・株主リスト
・就任承諾書
の3つの書類については、書類に決まったテンプレートがあるわけではなく、ご自身で書類の作成を行う必要があります。
法務局がひな形を用意しており、こちらのページ(役員変更登記に関する書類の雛形|法務局)の下部に「添付書面の記載例」という箇所があるのでそちらからWord形式でダウンロードを行い、書類の作成を行っていきましょう。
書類に入力する情報については、すでにご紹介した各書類の記載例をご覧ください。
役員の入社(就任)に伴う株主総会の手続きについてはこちらのサイトも参考になるかと思います。
 

役員変更登記の手続きに必要な添付書類


役員が入社(就任)したときの手続きでは、前述の書類とあわせて以下の添付書類も必要となります。
添付書類の内容は取締役会を設置しているか否かによって異なります。

・本人確認書類
・印鑑登録証明書

本人確認書類

取締役会を設置している会社である場合には、本人確認書類が必要となります。
新しく入社(就任)する役員の方の以下のいずれかの書類を準備しましょう。

・マイナンバーカードのコピー
・運転免許証のコピー
・住民票の写し(個人番号が記載されていないもの)

印鑑証明書

取締役会を設置していない会社の場合には、新しく就任する役員の印鑑証明書が必要になります。印鑑証明書の取得方法は以下の画像をご確認ください。



役員入社(就任)による役員変更登記手続き時の添付書類について解説している記事や、役員入社(就任)による役員変更登記時に必要な印鑑や手続きについて紹介している記事もありますので、詳しく知りたい方はご覧ください。

また、

なども参考になるかと思います。

役員変更登記手続きの申請期限と提出先



役員が入社(就任)したことによる役員変更登記手続きの期限は、役員の就任日(入社日)から2週間以内に行う必要があります。申請手続きを怠ったり申請手続きが遅れてしまうと過料を科せられる可能性もあるので、時間に余裕をもって手続きを進めていきましょう。
役員変更登記手続きを怠った場合の影響を解説している記事もありますので、気になる方はご覧ください。

役員変更登記手続きに必要な書類の提出先

役員変更登記手続きに関する書類の準備ができたら、まとめて管轄の法務局へ提出を行います。提出する際は、法務局へ直接足を運び提出するか、郵送で提出を行うことも可能です。
自社の管轄の法務局がわからない場合は、こちらのツール(自社の各種役所判定ツール)を活用してみてください。住所を選択するだけで、管轄の法務局をすぐに知ることができます。

また、法務省が提供している登記・供託オンライン申請システムを活用したオンライン申請を行うことも可能です。
オンラインでの申請手続きを行いたい方は、法務局の公式サイトに申請の手順が記載されているので、あわせて参考にしてみてください。

役員入社(就任)による役員変更登記の手続きにかかる費用


役員の入社(就任)に伴い役員変更登記手続きを行う場合は、約1万円ほどの費用がかかります。
内訳としては、
・登録免許税:1万円
・印鑑証明書の発行費用:390円〜450円
※印鑑証明書の発行費用は、請求方法や受取方法によって異なります。
詳しくは、こちらのページ(登記手数料について|法務省)をあわせてご覧ください。

役員変更登記の手続きを自分でやる場合のメリット・デメリット

役員変更登記の手続きは、自分で行わずに専門家に依頼することも可能です。
役員変更登記の手続きを自分で行う場合や手続きを専門家に依頼する場合で、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。

一番のメリットは費用を抑えることができる

役員が入社(就任)時に役員変更登記の手続きを自分で行ったときに一番のメリットは、費用を抑えることができることです。先ほど解説した通り、役員変更登記の手続きにかかる費用は約1万円です。費用を少しでも抑えていきたいと思っている方は、役員変更登記の手続きを自分で行っていきましょう。

自分で手続きをやる場合、手間がかかるのがデメリット

自分で役員変更登記の手続きを行うデメリットは、すべての手続きを自社で行うため時間や手間がかかってしまうことです。
「必要な書類について調べてから、書類の印刷・記入を行い、役所へ提出する」
文章で見れば簡単そうな手続きに見えるかもしれませんが、会社によって提出する書類や記載内容が異なることがあり複雑で大変な手続きです。
また、記載内容を誤ったまま提出してしまい、書類の再提出が必要になる可能性もあります。自分で役員変更登記の手続きを行う際は、時間に余裕をもって丁寧に手続きを進めていきましょう。

役員変更登記の手続きを専門家に依頼する場合のメリット・デメリット

一方で、自分では役員変更登記の手続きを行わず、専門家に依頼する場合のメリット・デメリットを紹介します。

必要な手続きをほぼ丸投げできる

役員変更登記の手続きを専門家に依頼する一番のメリットは、役員変更登記に関する手続きをほぼ任せることができる点です。
どのような書類が必要なのか、書類にはどのような情報を記載すればよいのかなどの手続きの流れを、自分でいちいち調べる必要はありません。専門家に手続きを任せることで、役員入社(就任)による役員変更登記の書類作成などの手続きをスムーズに対応してくれます。

役員変更登記の手続きを専門家に依頼する場合、専門家に支払う報酬がかかる


役員変更登記の手続きを専門家に依頼するデメリットは、専門家に支払う報酬が追加の費用としてかかってしまうことです。依頼先にもよりますが、役員変更登記の手続き1回につき、1万円〜3万円前後の報酬がかかります。
役員入社(就任)後の役員変更登記の手続きを自分で行えば、1万円ほどの費用で手続きを済ませることができますが、専門家に手続きを依頼すると合計で2万円〜4万円前後の費用がかかります。
役員入社(就任)後の役員変更登記手続きの依頼時の費用について細かく解説している記事もありますが、専門家に手続きを依頼した場合には目安として2万円〜4万円の費用がかかることを念頭に入れておくと良いでしょう。

また、役員変更登記の手続きをはじめ、会社の登記申請手続きは司法書士もしくは弁護士だけが行える業務ですので、依頼を行う司法書士や弁護士を自分で探す必要があります。
こういった専門家を自分で探す手間や時間も含めてコストがかかってしまうことは、役員入社(就任)後の役員変更登記手続きを専門家に依頼した場合の費用を解説しているサイトなどでも言われているように、1つのデメリットと言えるでしょう。

役員の変更があった場合には、変更登記手続きを忘れずに!

役員が新たに入社(就任)した場合に発生する役員変更登記手続きのやり方や必要な書類について、また自分で手続きを行った場合と専門家に手続きを依頼した場合のメリット・デメリットもご紹介しました。
役員が入社(就任)した際には会社としてどのような手続きや書類が必要なのか、みなさんの理解が深まっていれば嬉しく思います。
今回ご紹介した役員入社(就任)後の役員変更登記てづきを含めて、会社を経営していく中で様々な手続きが発生します。一つ一つの手続きを自分で行うことができればコスト削減に繋がりますが、自分で手続きを行うのが難しい方は、専門家へ手続き依頼するのも1つの選択肢です。
時間やお金、手間など様々なバランスを考えながら、みなさんの会社にあったやり方で必要な手続きを進めていきましょう。必要な手続きを忘れてしまい過料を科されることが無いように、どの手続きも忘れずに余裕をもって進めていきましょう。

この記事では、株式会社における役員が入社した際の手続きや提出書類について解説しましたが、以下の記事では合同会社における役員入社の手続きや提出書類について解説しています。
合同会社の方は、以下の記事を参考にしてみてください。

参考記事:「合同会社の役員が就任した場合に必要な、登記手続きと提出書類について解説

提出必要書類の一覧

  • 株式会社変更登記申請書
  • 株主総会議事録
  • 株主リスト
  • 就任承諾書
  • 本人確認書類
  • 印鑑登録証明書

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