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登記
本店移転

本店移転の登記申請後の手続きとそのやり方について解説します

公開日:2023.09.19

更新日:2024.01.30

会社の本店移転(住所変更)が発生した場合は、登記申請(登記の変更)を行う必要がありますが、登記申請の書類作成という手続きだけを行えばよいというわけではありません。
登記申請(登記の変更)に関する書類を法務局へ提出する手続き以外にも、税務署や年金事務所など、様々な役所へ書類を提出するなどの手続きを行う必要があります。
この記事では、本店移転の登記申請後に行うべき手続きとやり方及び必要書類の作成方法について解説していきます。手続き時に必要な書類の提出先ごとに解説していきますので、参考にしていただければと思います。

本店移転とは?

まずは、本店移転について解説していきます。
こちらの記事(法人の本店移転とは?本店移転の手続きや必要書類について解説)でも本店移転について詳しく解説していますが、本店移転とは会社の本店住所(所在地)を変更することです。
日本に設立されている会社は、登記制度により会社の名称や本店住所、代表者の氏名などが登記事項として、一般に公開される仕組みとなっています。
登記事項に変更があった際には、法務局へ登記申請書を提出する必要があり、本店住所の変更も例外ではありません。
みなさんが引っ越しをした際に住民票の変更を役所で手続きするように、会社も本店を移転した際には、登記上の本店住所を変更するための手続きが必要となります。
本店移転の登記申請手続きは必ず行わなければならず、申請には期限も設けられています。期限を過ぎてから登記申請を行うと、罰金を科される可能性もあるので注意しましょう。

関連記事「【記載例まで解説!】本店移転登記に必要な書類の書き方について解説 」では、登記申請時に必要な書類である登記申請書の詳しい書き方を記載例付きでご紹介しています。
また、登記申請時に必要な資料や書類を解説しているサイトもありますので参考にしてみてください。

本店移転に必要な手続きは、登記申請だけではない! 


法務局へ登記申請を行うことで本店住所の登記変更を行うことができますが、本店移転の手続きはこれで終わりではありません。
本店移転を行った際には、管轄の役所が変更となる場合も多いので、本店移転を行った旨を各役所へ書類で提出する必要があります。
この手続きを忘れてしまうと、役員や従業員の社会保険や労働保険にも影響する可能性がありますので、忘れずに手続きを行うようにしましょう。

本店移転に必要な書類(登記申請書以外)の書き方を、書類の提出先別に解説

では、本店移転の登記申請を行った後に必要な手続きのやり方及び書類の作成方法について、書類の提出先別に解説していきます。
社会保険及び労働保険の加入状況によっては提出が不要となる書類もございます。各書類の説明とあわせて、提出が必要となる会社の条件も記載しているので、ご自身の会社が当てはまるかも含めて確認をしましょう。
また、今回ご紹介する手続きでは、書類の提出先となる自社の管轄の役所を適宜調べる必要があります。自社の管轄の役所を調べる際には、こちらのツールが便利ですのでご活用ください。
 

日本年金機構(年金事務所)事務センターへ提出する書類

提出が必要なもの

・適用事業所名称所在地変更届
・添付書類(本店移転が反映された登記簿謄本)

添付書類として提出が必要となる「登記簿謄本」の取得方法については、こちらの記事(本店移転に関連する手続きで必要な登記簿謄本の取得方法について解説)で解説をしています。参考にしていただければと思います。

提出が必要となる条件

健康保険と厚生年金保険に加入している場合
※一部の例外を除き、基本的には加入していることがほとんどです

提出期限・提出先

日本年金機構(年金事務所)の事務センターへ提出するこちらの書類は、本店移転を行ってから5日以内に提出する必要があります。また、提出先は本店移転の所在地を管轄する日本年金機構(年金事務所)の事務センターとなります。

提出に際しての注意事項

日本年金機構(年金事務所)の事務センターへ提出を行う「適用事業所名称所在地変更届」は、こちらのページ(適用事業所名称所在地変更届のダウロードページ|日本年金機構)からダウンロードすることができます。
併せて提出する添付書類ですが、本店移転が反映された登記簿謄本を提出する必要があるので、準備をしておきましょう。

提出書類の記載例

適用事業所名称所在地変更届は、以下の記載例を参考に記入を進めていきましょう。

 

労働基準監督署へ提出する書類

提出が必要なもの

・労働保険名称所在地等変更届
・添付書類(本店移転が反映された登記簿謄本)

提出が必要となる条件

労災保険に加入している場合

提出期限・提出先

労働基準監督署へ提出するこちらの書類は、本店移転を行ってから10日以内に提出する必要があります。また、提出先は本店移転の所在地を管轄する労働基準監督署となります。

提出に際しての注意事項

労働基準監督署へ提出を行う「労働保険名称所在地等変更届」は、複写式の専用用紙に記入するため、書類を本店移転の管轄の労働基準監督署から取り寄せる必要があります。なるべく早めに取り寄せるようにしておきましょう。
また、併せて提出する添付書類ですが、本店移転が反映された登記簿謄本を提出する必要があるので、準備をしておきましょう。
また、この書類の控えが、ハローワークに提出する書類である「雇用保険事業主事業所各種変更届」の提出時に必要となります。

書類の記載例

労働保険名称所在地等変更届を労働基準監督署から取り寄せた後は、以下の記載例を参考に記入を進めていきましょう。

公共職業安定所(ハローワーク)へ提出する書類

提出が必要なもの

・雇用保険事業主事業所各種変更届
・添付書類(本店移転が反映された登記簿謄本・労働保険名称所在地等変更届の事業主控え)

提出が必要となる条件

雇用保険に加入している場合

提出期限・提出先

公共職業安定所(ハローワーク)へ提出するこちらの書類は、本店移転を行ってから10日以内に提出する必要があります。また、提出先は本店移転の所在地を管轄する公共職業安定所(ハローワーク)となります。

提出に際しての注意事項

公共職業安定所(ハローワーク)へ提出を行う、雇用保険事業主事業所各種変更届はこちらのページ(雇用保険事業主事業所各種変更届ダウロードページ|ハローワーク)からダウンロードがすることができます。

併せて提出する添付書類ですが、
・本店移転が反映された登記簿謄本
・労働保険名称所在地等変更届の事業主控え

の2つの書類が必要となります。

労働保険名称所在地等変更届の事業主控えは、2つ目に紹介した労働基準監督署へ提出する書類の控えです。
そのため労働基準監督署への書類提出を済ませてから、公共職業安定所(ハローワーク)への書類の提出を行うことに注意しておきましょう。

書類の記載例

雇用保険事業主事業所各種変更届は、以下の記載例を参考に記入を進めていきましょう。



ここまででご紹介した労務関係(社会保険や労働保険)の手続きのやり方及び書類の作成方法については、本店移転登記後に必要な労務手続きが網羅された関連記事「本店移転登記後に必要な社会保険などの労務手続きについて解説します」でも紹介しています。
会社・法人の住所変更(本店移転)後の手続き一覧を解説しているサイト本店移転の手続きについての全体像を解説しているサイトも参考になるかと思います。

税務署へ提出する書類

提出が必要なもの

・異動届出書
・給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書

提出期限・提出先

税務署へ提出する書類は、書類によって提出期限が異なります。
異動届出書本店移転後速やかに
給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書:開設、移転又は廃止の事実があった日から1ヶ月以内

提出先はどちらの書類も、本店移転の所在地を管轄する税務署となります。
提出期限は書類によって異なるものの、提出先はどちらの書類も同じであることから、同じタイミングで提出することをお勧めします。

提出に際しての注意事項

それぞれの書類は国税庁のHPからダウンロードすることが可能です。以下より、書類のダウンロードを行いましょう。


異動届出書|国税庁
給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書|国税庁

書類の記載例

提出する2つの書類は、以下の記載例を参考に記入を進めていきましょう。
どちらの書類にも、異動年月日や移転年月日の記入欄がありますが、この箇所は本店移転を決議した会議体の決定事項をもとに記載を行うので注意しましょう。

異動届出書の記載例

①取締役会および、取締役が本店移転の異動日を決定した場合


②株主総会で本店移転の異動日を決定した場合

給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書の記載例

①取締役会および、取締役が本店移転の異動日を決定した場合

②株主総会で本店移転の異動日を決定した場合


税務署への手続きのやり方や必要書類の書き方については、関連記事「本店移転の登記申請後に必要な税務署への書類提出について解説」や「5分でわかる!本店移転手続きと税務署に届ける書類一覧」などで紹介しています
 

移転前の都道府県税事務所へ提出する書類

提出が必要なもの

・異動届出書(都道府県税事務所)
・添付書類(定款・本店移転が反映された登記簿謄本)

提出が必要となる条件

会社には、地方税である法人住民税・法人事業税もかかっているため、すべての会社が必要です。

提出期限・提出先

都道府県税事務所へ提出する書類は、本店移転後速やかに提出を行う必要があります。また、提出先は本店移転前の所在地を管轄する都道府県税事務所となります。

提出に際しての注意事項

異動届出書(都道府県税事務所)は、都道府県によって書類の形式や手続き方法が異なります。書類をダウンロードする場合は「〇〇県 異動届出書」とインターネットで検索を行い、ダウンロードを行いましょう。
※〇〇県には移転前の都道府県が入ります

書類の記載例

異動届出書(都道府県前事務所)は、以下の記載例を参考に記入を進めていきましょう。
※以下は東京都の記載例

移転後の都道府県税事務所へ提出する書類

提出が必要なもの

・法人設立設置届出書(都道府県税事務所)
・添付書類(定款・本店移転が反映された登記簿謄本)

提出が必要となる条件

東京都から横浜市へ移転する場合など、都道府県を跨ぐ本店移転を行う場合に必要です

提出期限・提出先

都道府県税事務所へ提出する書類は、本店移転後速やかに提出を行う必要があります。また、提出先は本店移転後の所在地を管轄する都道府県税事務所となります。

提出に際しての注意事項

法人設立設置届出書(都道府県税事務所)は、都道府県によって書類の形式や手続き方法が異なります。書類をダウンロードする場合は「〇〇県 異動届出書」とインターネットで検索を行い、ダウンロードを行いましょう。
※〇〇県には移転後の都道府県が入ります

書類の記載例

法人設立設置届出書(都道府県前事務所)は、以下の記載例を参考に記入を進めていきましょう。
※以下は東京都の記載例

移転前の市町村の役所へ提出する書類

提出が必要なもの

・異動届出書
・添付書類(本店移転が反映された登記簿謄本)

提出が必要となる条件

原則、都道府県税事務所と同様、すべての会社が必要です。
移転前の本店住所が、東京都23区内の場合はこちらの提出は必要ありません。

提出先・提出期限

市町村の役所へ提出する書類は、本店移転後速やかに提出を行う必要があります。また、提出先は本店移転前の所在地を管轄する市町村の役所となります。

提出に際しての注意事項

異動届出書は、市町村によって書類の形式や手続き方法が異なります。書類をダウンロードする場合は「〇〇市 異動届出書」とインターネットで検索を行い、ダウンロードを行いましょう。
※〇〇市には移転前の都道府県が入ります

書類の記載例

異動届は、以下の記載例を参考に記入を進めていきましょう。
※以下は東京都の記載例

移転後の市町村の役所へ提出する書類

提出が必要なもの

・法人設立設置届出書
・添付書類(定款・本店移転が反映された登記簿謄本)

提出が必要となる条件

原則、すべての会社が必要です。
移転後の本店住所が、東京都23区内の場合はこちらの提出は必要ありません。

提出先・提出期限

市町村の役所へ提出する書類は、本店移転後速やかに提出を行う必要があります。また、提出先は本店移転後の所在地を管轄する市町村の役所となります。

提出に際しての注意事項

法人設立設置届は、市町村によって書類の形式や手続き方法が異なります。書類をダウンロードする場合は「〇〇市 異動届出書」とインターネットで検索を行い、ダウンロードを行いましょう。
※〇〇市には移転後の市区町村が入ります

書類の記載例

異動届は、以下の記載例を参考に記入を進めていきましょう。
※以下は大阪市の記載例

 

役員・従業員が居住する市区町村へ提出する書類

提出が必要なもの

給与支払者(特別徴収義務者)所在地・名称変更届出書

提出が必要となる条件

会社が特別徴収義務者の指定を受けている場合。

提出先・提出期限

役員・従業員が居住する市区町村へ提出する書類は、本店移転後速やかに提出を行う必要があります。また、提出先はその年の1月1日時点で役員・従業員が居住する市区町村です。
特別徴収を行っている、役員・従業員分の書類を準備する必要があります。事前に役員・従業員の情報をまとめておき、スムーズに手続きを進められるようにしましょう。

提出に際しての注意事項

市町村によって書類の形式が異なります。書類をダウンロードする場合は「〇〇市 給与支払者(特別徴収義務者)所在地・名称変更届出書」とインターネットで検索を行い、ダウンロードを行いましょう。

書類の記載例

給与支払者(特別徴収義務者)所在地・名称変更届出書は、以下の記載例を参考に記入を進めていきましょう。
※以下は横浜市の記載例

 

まとめ

今回の記事では、本店移転の登記申請後の手続きと、そのやり方について解説していきました。登記申請を行えば本店移転自体の手続きは終わりますが、本店移転には、登記申請だけでなく、様々な手続きが必要になります。自分ですべての手続きを行うには時間と労力がかかってしまいますが、この記事の記載例を見ながら1つ1つ手続きを進めていきましょう。

本店移転の登記申請をはじめ、本店移転に関する手続きを自分で行うか迷っている方は、こちらの記事(自分で本店移転の登記手続きを行うメリット・デメリット)もあわせて参考にしてください。

また、この記事では割愛しましたが、本店移転に伴う「法人地方税」に関する手続きについては、こちらの記事(本店移転に伴って必要な法人地方税の手続きについて解説します)で解説しています。あわせてご覧ください。

提出必要書類の一覧

  • 適用事業所名称所在地変更届(日本年金機構の事務センター)
  • 労働保険名称所在地等変更届(労働基準監督署)
  • 雇用保険事業主事業所各種変更届(ハローワーク)
  • 労働保険名称所在地等変更届の事業主控え(ハローワーク)
  • 異動届出書(税務署)
  • 給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書(税務署)
  • 異動届出書(都道府県税事務所)
  • 異動届出書(市区町村)
  • 法人設立設置届出書(市区町村)
  • 給与支払者(特別徴収義務者)所在地・名称変更届出書(役員・従業員が居住する市区町村)
  • 本店移転が反映された登記簿謄本(添付書類として各役所へ)

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