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法人の本店移転登記(住所変更)とは?手続きや書類、自分で申請するやり方を紹介
公開日:2023.09.20
更新日:2024.01.30
本店移転登記とは?
「本店の移転」とは、登記簿に記載された会社の本店住所を変更することをいいます。会社の本店所在地は法的な住所であり、会社が登記されている場所です。本店移転が必要になる場合は、例えば、新しいオフィスに本社を移す、別の地域に本社を設立する、または法人の所在地に変更が必要な場合等があります。個人で引っ越した際に住民票の変更を役所に届け出るように、本店を移転した際には登記上の本店所在地を変更する手続きが必要となります。より詳しい内容を知りたい方は本店の定義について詳しく解説しているサイトをご覧ください。
個人の住所は住民票に記録されています。ですから個人が住所を変更した場合には、住民票に記録されている住所に変更が生じるため、役所へ変更届を行う必要があります。これと同様に、会社の本店所在地も登記簿と言われるものに記録されています。登記簿は、事業者が会社の設立登記をした場合に、法務局により作成され、一社ごとの会社の基本情報が管理されるようになります。この基本情報には例えば「商号」や「本店住所」「資本金」「役員の氏名」などがあり、必ず登記する事項となっています。つまり、この登記簿に記載されている情報である「本店住所」に変更が生じた場合、法務局に変更の届出が必要となるのです。
さらに深く知りたい方は登記の記載内容について解説しているサイトをご覧ください。
本店移転登記の手続きが必要な理由と申請期限
会社法上、登記事項に変更が生じた場合は2週間以内に登記をしなければなりません(会社法第915条1項)。会社の登記事項に変更が生じたにも関わらず登記をせずに放置していると、代表者個人に対し100万円以下の過料(罰金のようなもの)が科される場合があります。
なぜ登記の義務があるかというと、国が備える登記簿に、取引上重要な情報を登記(公示)することによって、取引相手の安全を保護しているからです。情報が古いことが原因で、取引の相手方に混乱を与えることを未然に防ぐために、登記事項(重要な事項)に変更が生じた場合、登記(公示)する義務を代表者に課しています。
したがって、会社の本店を移転した場合にも、移転した日から2週間以内に、法務局で変更登記(本店移転登記)の手続きをしなければなりません。これは、法律で定められた義務になります。
罰則については今解説したことを押さえておけば十分ですが、より詳しい内容を知りたい方は本店移転の登記手続きをしなかった場合の罰則について解説しているサイトや本店移転登記を怠った場合のリスクや過料について解説しているサイトをご覧ください。
なお、2週間の期間が経過し、期限を過ぎて申請した場合に制裁が課されるかどうかは、審査する法務局・裁判所の裁量となっているのが実情です。しかしながら、登記懈怠には十分注意が必要なことに変わりはありません。移転したにも関わらず、本店移転登記をしないでいるとそれだけ過料の負担が大きくなる可能性が増しますので、義務期間内に登記は済ませるように心がけ、既に期限を過ぎ懈怠している場合でも早めに手続きを済ませてしまいましょう。期間は2週間と非常に短いので、移転後すぐに手続きに行くことをオススメします。
本店移転の登記手続きの申請先はどこ?
法人の本店移転登記の申請は、自社の本店所在地を管轄している法務局で行います。
これまでに自社の本店移転(オフィス移転)の経験がなければ、会社設立登記を申請した法務局となります。自社の本店移転(オフィス移転)の経験がある場合は、当時の移転先の住所を管轄している法務局(現在の本店住所所轄の法務局)となります。本店移転登記手続きを実施する前に、必ず、現在の住所の管轄法務局の名前と場所を確認しましょう。
出典:法務局「管轄のご案内」
出典:法務局「商業・法人登記の申請書様式」
株式会社の本店移転登記手続きに必要な準備とそのやり方
本店移転には、登記申請だけでなく社内や株主総会などさまざまな手続きが必要です。
本店移転登記手続を実施する際に必要な準備を、①本店の移転を決定する会社内部での準備、②本店の移転があったことを法務局に届け出る登記申請手続きのための準備(郵送もしくは直接提出)の2つに分けて解説します。この記事では「株式会社」の本店移転登記について解説するので、合同会社の方はこちらの記事(合同会社の本店移転登記の手続きに必要な書類ややり方について解説)を参考にしてください。
①会社内部で必要となる手続き
まず、本店を移転する際には、まず取締役が「移転先」を決定します。この移転先の決定方法は⑴取締役(取締役会)の決定のみでよい場合と⑵株主総会の特別決議に従う必要がある場合があります。特別決議とは、議決権を行使できる株主の過半数が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成で行う決議になります。⑵の株主総会の決議が必要な場合とは移転先が定款の変更を要する場合です。例えば、千代田区にある本店を中央区へ引越しするのであれば定款の変更が必要となります。基本的にはこの点を押さえておけば大丈夫ですが、本店移転で株主総会が必要なケースについて解説しているサイトも参考になるかと思います。
会社法上、会社の本店所在地は定款の必須記載事項とされており、定款の変更をともなう決定は特則を除き、必ず株主総会の決議に従う必要があります。なお定款に記載する、本店所在地は最小行政区画(市町村・東京23区)までが必須とされているため、ここに変更が生じる場合は、株主総会決議に従う必要があります。つまり、元の所在地が「東京都渋谷区神南1丁目1番1号」のように、町名や番地まで具体的に記載されている場合は、定款の変更が必要となり、株主総会で議決を行います。一方で、本店の所在地が「東京都渋谷区」などのように、最小行政区画(市町村・東京23区)までしか定款に記載されておらず、かつ同じ最小行政区域内に移転する場合は、定款の変更を行う必要はありません。定款は、基本的なルールのため、その内容は取締役(取締役会)の一存で変更はできないこととされているのです。
(参考:定款の記載例)
②法務局への登記申請手続き
次に、登記申請手続きは、会社の本店所在地を管轄する法務局で行う必要があります。管轄を間違えると申請は却下されます。この管轄は例えば本店が千代田区内なら、東京法務局(本局)、渋谷区内であれば渋谷出張所のように分けられていますので適切な管轄を調べる必要があります。
そして、この管轄の同一区域内で本店移転を行うことを「管轄内移転」、2つの管轄を跨いで本店移転することを「管轄外移転」と言い、手続きが異なります。管轄内移転の場合は通常の登記手続きと変わりませんが、管轄外移転の場合では、旧管轄と新管轄の登記所双方へ申請手続きを行う必要があります。本店移転の管轄内移転と管轄外移転の違いについては、関連記事「本店移転における管轄内移転と管轄外移転の違いについてを解説」やこちらのサイトでも詳しく解説されています。
出典:法務局「各法務局のホームページ」
ただし、双方へ申請手続きを行う必要があるといってもそれぞれに出向く必要はなく、それぞれの本店移転登記申請書を作成し、便宜上、旧管轄へ書類を提出し審査を受ければよいこととなっています。この後の流れはいずれも同じで、登記の完了を確認したら登記事項証明書を取得し、本店が正しく移転されていることを確認して、登記手続きは無事終了となります。
出典:法務省:商業・法人登記 Q&A 「会社の本店を移転するにはどこに登記申請をすればよいのですか?」
本店移転の登記申請に必要な書類と費用
自分で本店移転の登記申請をする上で必要なのが、提出する書類についての知識です。基本的には登記申請書に加えて、各種議事録や委任状などの添付書類の準備が必要になります。管轄内か管轄外の移転かによっても提出する書類は異なりますので注意しましょう。
関連記事「【記載例まで解説!】本店移転登記に必要な書類の書き方について解説」では登記申請手続きに必要な書類1つ1つについて、以下のようなオリジナルの記載例を交えながら解説しています。
実際に書類を作成される際には合わせてご確認ください。
移転前と同じ法務局の管轄内に本店移転する場合
登記申請に必要な書類
<管轄内移転時の提出必要書類の一覧>・本店移転登記申請書
・取締役会議事録又は取締役決定書
・株主総会議事録(定款変更がある場合)
・株主リスト(株主総会議事録を添付する場合)
・委任状(代理人に手続きを依頼する場合)
定款の本店所在地の変更が必要な場合は、定款変更を決議した株主総会議事録が必要になり、株主総会議事録を添付する場合は株主リストの提出が必要です。
出典:法務局「商業・法人登記の申請書様式」
本店移転登記にかかる費用
・登録免許税:収入印紙3万円移転前と異なる法務局の管轄に本店移転する場合
登記申請に必要な書類
<管轄外移転時の提出必要書類の一覧>・本店移転登記申請書(旧法務局管轄分)
・本店移転登記申請書(新法務局管轄分)
・取締役会議事録又は取締役決定書
・株主総会議事録(定款変更がある場合)
・株主リスト(株主総会議事録を添付する場合)
・委任状(旧法務局管轄分)(代理人に手続きを依頼する場合)
・委任状(新法務局管轄分)(代理人に手続きを依頼する場合)
・印鑑届書
・印鑑カード交付申請書
出典:法務局「商業・法人登記の申請書様式」
管轄区域外に本店を移転すると、それまで印鑑届出をしていた法務局と、移転後に管轄する法務局が異なるため、新しく管轄となる法務局に改めて会社の印を届け出る必要があります。
また、管轄外移転時には今まで利用していた印鑑カードは使えなくなるため、新たに本店所在地の管轄法務局から印鑑カードの交付を受けなければなりません。
本店移転登記が完了した後に交付申請をしても問題ありませんが、登記申請の際に合わせて印鑑カード交付申請書を提出しておくと、手間が省けます。
本店移転登記の手続きにて「印鑑届出書」の必要有無については、こちらの記事(本店移転の登記手続きで印鑑届出書が必要な場合)にて解説しています。あわせてご覧ください。
本店移転登記にかかる費用
・登録免許税:収入印紙6万円 (3万円×2)管轄外移転時は旧法務局提出分、新法務局提出分の本店移転登記申請書にそれぞれ30,000円分の収入印紙を貼付する必要があります。
管轄外移転の場合は定款の本店所在地を変更する必要がある為、株主総会議事録・株主リストが必要となります。本店移転登記申請書・委任状は移転先住所を管轄している法務局へ提出する分も必要となりますのでご注意下さい。また、管轄外本店移転の登記申請を書面にて行う場合、移転先を管轄している法務局へ印鑑届書の提出が必要です。
本店移転登記の申請後に必要な手続き
以上で法務局への本店移転登記は完了です。ただし、実務上は他にもやっておくべき申請や手続きがいくつかあります。わかりやすいところでは「税務署への届け出」や「郵便物の転送」ですが、法人の場合に必要になる手続きはおおよそ以下になります。提出先 | 書類 |
---|---|
税務署 | ・異動届出書 ・給与支払事務所等の開設・移転廃止届出書 |
日本年金機構の事務センター (年金事務所) | ・適用事業所名称所在地変更届 |
労働基準監督署 | ・労働保険名称所在地等変更届 |
ハローワーク | ・雇用保険事業主事業所各種変更届 |
都道府県税事務所 | ・異動届出書(都道府県税事務所) |
市町村 | ・異動届 |
それぞれの書類の書き方や手続きのやり方については、関連記事「本店移転の登記申請後の手続きとそのやり方について解説します」や「本店移転の登記申請後に必要な税務署への書類提出について解説」、「本店移転登記後に必要な社会保険などの労務手続きについて解説します」で記載例を交えながら解説しています。また、本店移転の一連の流れについて解説しているサイトも参考になるかと思います。
都道府県税事務所や市町村へ必要書類の提出を行う、本店移転に伴う「法人地方税」に関する手続きは、こちらの記事(本店移転を行なった後に行う法人地方税に関する手続きについて)を参考にしてください。
関連記事本店移転の登記申請後に必要な税務署への書類提出について解説では以下のような記載例を交えながら、税務署への提出書類について解説しております。
本店移転の申請のやり方
本店移転登記の申請方法には3つのやり方があります。
1.オンラインで申請する
2.法務局の窓口で提出する
3.法務局に郵送する
それぞれのメリットや申請時の注意点について解説していきます。
オンラインで申請する
オンラインで本店移転登記をすると、以下のようなメリットがあります。・法務局の窓口まで行く必要がない
・登録免許税の納付を収入印紙購入ではなく、ネットバンキングで行える
ただし、申請ソフトのインストールや使い方を習得したり、電子署名の利用登録をしたりする必要があるため、一定の手間がかかります。申請ソフトは一度インストールしておけば、移転以外のさまざまな登記の際にも利用できますので、利用頻度が高い場合はオンライン申請に慣れておくと便利です。
参考:登記・供託オンライン申請システム登記ねっと 供託ねっと
法務局の窓口で提出する
法務局の窓口で本店移転登記をすると、以下のようなメリットがあります。・窓口で疑問に答えてもらったり、その場で不備を指摘してもらえる
ただし、交通費がかかったり、社内担当者の工数が増えたりと、一定の手間がかかるといえます。
法務局に郵送する
法務局に郵送する形で本店移転登記をすると、以下のようなメリットがあります。・法務局の窓口まで行く必要がない
本店移転登記は郵便でも信書便でも申請が可能です。普通郵便でも問題ありませんが、法務局ではできる限り到達の確認が可能な書留で送ることを推奨しています。なお、郵送の際、封書の表面には「登記申請書在中」と明記して投函しましょう。
郵送での申請は、投函してから法務局が受け取るまでに時間がかかるというデメリットもあります。
本店移転の登記申請は上記の方法で手続きを進めることができますが、自分で手続きを行うか専門家(司法書士)へ依頼することも可能です。本店移転登記の手続きを自分で行うか迷っている方は、こちらの記事(本店移転登記を自分で行うメリットとデメリット、費用について解説します)もあわせてご覧ください。
まとめ
会社の本店を移転したら、2週間以内に登記手続きを行わなければなりません。しかし、本店移転により様々な事務処理も発生しますから、登記手続きに時間や手間をかけていられない場合も多いかと思います。そのため、司法書士に依頼することも1つの手段ですが、自分で登記申請を行うよりもコストがかかってしまいます。
ひとつ一つの書類の作成や手続きは決して難しいものではありませんので、抜けや漏れがないよう確認しながら準備していけば滞りなく進められる業務です。
法務局へ相談することもできるので、コストをかけずに手続きをしたい人はぜひ自分で準備・申請を進めてみましょう。
提出必要書類の一覧
- 本店移転登記申請書
- 取締役会議事録又は取締役決定書
- 株主総会議事録
- 株主リスト
- 委任状
- 印鑑届書
- 印鑑カード交付申請書
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